君のその手を
□11章:俺の彼女を紹介します。
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静かにジャズが流れているバーの店内は、居酒屋のように酔って騒ぐヤツなんていない。
柔らかな明かりの中、カウンターで1人で飲む男性客や、ワリと歳がイった男女のカップルがそれぞれの“世界”のナカで酒を楽しんでいる。
俺も政宗もいつの間にかこの空間にハマってしまい、落ち着いて話をしたい時には、隠れ家的な“ここの店”と決まってた。
この目の前の男と大衆居酒屋なんて行ったら“逆ナン”ばっかし。
落ち着いて飲めたモンじゃなかった。
カランカラン…
昔懐かしいウィンドウチャイムの音が店内に響く――。
来るにしては早ぇな…他の客だろ…、と思った為、振り向きもしなかった。
政宗自体は音にすら気がついてないようで、グイグイと酒を煽りながら愚痴を溢してた。
政宗んトコの受付嬢が美人で密かに狙ってるんだけど、片倉サンが目を光らせててどうとか…
この前雑誌の取材の時の担当者に『後で食事でも』と誘ったら、背後から『そんな暇はございません』と首根っこ掴まれて本社へ送還されたとか…
なんか表向きは華やかに見えても、本人にしたらそんなカンジじゃねぇんだろな…と不憫に思ってたその時…
「せーんせ。」
いきなりポンっと叩かれた肩と背後からの優しい声。
「あ゙!?…って渚!?早くねぇか!?オマエ、ぶっ飛ばして来たな…!?」
「Ah…?渚? …ちっちぇ…。けど…very cute…。 」
「へっ…?」
あー…何かイヤな予感がする…。
確実に。
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