君のその手を
□11章:俺の彼女を紹介します。
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頭はズバ抜けて良いハズなのに、
“ナース”=“エロ”
という方程式しかないこの男の頭のナカをどうにかしたい。
よほどストレスが溜まっているのか酒の勢いなのか、その“話題”にやけに食いついてきた。
色男が台無しになるくらい“下ネタ”トークが炸裂。
この“姿”は昔っから見てるし、俺もよく便乗したもんだ。
だが…、
『何色の白衣か』
『丈は短いか』
『仕事中に隠れて会ったりしてんのか』
そんな質問ばかりして、勝手に渚のイメージをエロく膨らませていく様子が手にとるように分かるもんだからますます会わせたくなくなってきた。
黙っておくべきだったと後悔――。
「…オマエもう帰ったほうがイイぞ?片倉サンが待ってんじゃね?」
「Ah?渚に会うまでは帰んねぇよ。それにタクシーで帰るつもりで小十郎は家に帰してる。仕事を完璧に片付けて、有無を言わせねぇようにして来たからな。」
「……。」
チッ…。
こんな時こそ頼むよ片倉サン…。
♪♪♪〜♪♪♪
テーブルに置いた俺の携帯が鳴った。
お…?
どうやら定時には終わったようだ。
“誰から”というのは見ずとも渚からの着信音だけは音を変えてあるからすぐに手に取った。
「…もしもし渚?」
『あ、先生、まだ飲んでます?今仕事終わったから帰りますけどどうしますか?もう少し飲みたいなら後で迎えに行ってもイイですよ?』
「あぁお疲れさん。いや、もう帰るから一緒に乗せてけ。俺のメットも持ってきてくれただろ?」
『えぇ、持ってきました。…じゃあ今から向かいますね。』
ピッ
「…来るってか?」
「あぁ。だからオマエも帰れ。」
「さっきから『帰れ帰れ』煩ぇな…。Hum…渚を俺に会わせたくねぇんだろ…?」
ご名答。
よく分かってるじゃねぇか。
「…渚が来たら俺は即刻帰るからな!?ちょっかい出すなよ!?」
「アホか!?出すワケ無ぇだろ!!親友の女に手ぇ出すほど飢えてねぇっつーの…それにそこまでオマエが“惚れてる女”は是非とも拝んどかなきゃねぇしな!!」
…だからそんなギラついた目すんなって…。
かといって一応?親友である“この男”に紹介しねぇワケにはいかねぇし――。
はぁ〜…
俺は本日二度目の溜め息を吐いた――。
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