君のその手を
□11章:俺の彼女を紹介します。
2ページ/8ページ
「…そういえばこの前、喜多ンとこで飯食った女とはどうなったんだよ?喜多が気にしてたぜ?『会ったら聞いといてくれ』ってよ。」
「あー、まぁお陰様っつーか“彼女”になった。」
「ふーん。良かったじゃねぇか。…で、どんな女なんだ?なんか喜多がえらく気に入ってたから俺も気になってな…。」
『どんなヤツ』って言われてもなぁ…、と暫し考え込み、思い浮かべた。
“一言”じゃ言い表せない。
“バカ”が付くほど正直で、真っ直ぐで――
“超”が付くほど照れ屋で――
だけど“走り”じゃ絶対に勝てない相手――
でも、“求めてくる”時だけは『元親』と呼んでくれるそんなヤツ。
思い浮かべる彼女はいつも優しい顔で笑っている――。
一纏めにするとコレしかねぇな。
「まぁ…可愛くて、可愛くて、可愛い…。」
「Ha……?…ってアチっ!!」
くわえてた煙草を手の甲に落とすほど意外だったのか?と思うくらい、政宗は呆気に取られた顔をしやがった。
「…なんだよ…。」
「Hum…どうりでそんな“にやけたツラ”してるワケか…。」
「はぁ!?」
「…まぁイイんじゃね?長いこと“女”作ってなかったもんな〜。色々と尽くしてもらえよ。」
「…渚はそんなんじゃねぇよ…。俺が…渚に尽くしてぇんだ…。」
「ブッ!!おま…、本気かよ!?」
「きたね!!酒吹くな!!」
何がそんなに意外なんだよ!?
イイじゃねぇか!!
「…なぁ“彼女”呼べ。そこまで元親を惚れさせたヤツっつーのを見てみてぇ。」
「はぁ!?ココにか!?…あー…まだアイツ“仕事”してんし…。」
時計を見るがまだ12時過ぎ。
2日連続の準夜勤で今日が2日目。
渚に会っていないのはソレが理由だった。
まぁ『夜空けとけ、飲みに行こうぜ』と政宗から連絡があったのが昼休みだったから、『準夜が終わったら帰りに俺を拾ってくれ』とメールをしておいたから迎えに来るんだが…目の前の“この男”には内心会わせたくなかった。
猿以上に手が早いというのは、長年の付き合いで嫌と言うほど分かっている。
「Ha?こんな時間に仕事してんなんて“彼女”はキャバ嬢かなんかなのか?」
「あ゙!?違うって!!ナースだナース!!」
「Oh〜!!エロいな〜!!職場恋愛かよ!?」
「だからソレも違ぇって!!」
目の前の男の目の奥がギラリと光ったのを俺は見逃さなかった――。
・