君のその手を

□10章:確固たる存在に。
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「先生…?次シャワーどうぞ…。」



「あ?あぁサンキュ。…よっと。」



「/////!!」





シャワーを浴び終えて、俺を呼びに寝室のドアを開けた渚。




さて俺も…、とガバッと布団を捲った途端グルリと顔を反らしてドアを閉めてしまった渚。





そりゃまぁ俺が“何も着ていない”からなんだろうけど、まるで“初めて見た”かのような反応もどうかと思う。








俺も渚を“見た”が、渚だって俺のを“見てる”。







ホント“今さら”だ。










…かといって隠そうにも、昨夜風呂から上がった後はココまで全裸で移動してきたからバスタオルなんてモンはないし、毛布は渚が持って行っちまった。




クローゼットを勝手に開けるのも気が引ける。






結局、“そのまま”浴室に向かった。







渚はもうキッチンの奥に引っ込んで朝飯の準備に取り掛かっていたようだったから“見られる”コトはなかったが…多分意図的にそうしてたんだと思う。























一気に身体を起こしてしまおうと、シャワーを熱めに出す。




ふぅ…っと息を吐きながら、昨夜のコトを思い出した――。











来るか、来ないか。



胸を高鳴らせながらココで渚を待ってた。





『一緒に風呂』なんてよく言えたモンだと自分でも思う。



今まで女と風呂なんて入ったコトねぇのに。










実を言うと、ココで“始める”つもりはなかった。




だから『バスタオルを巻き付けてイイ』というのは俺から言った。





いきなりベッドに押し倒すより、“前置き”として少し“慣れ”てた方が“その後”に流れを持って行きやすいかと思ってた――。









彼女が来た。


“約束事”をキチンと確認して。








でも中々湯船にまでは入ろうとしなかった。




しかも俺の方を振り向きもしない。




それじゃ“慣れ”も何もねぇだろ、と思い、腕を掴んで湯の中へ引き入れた。







俯いた彼女の口から溢れた言葉に――



己がどれ程浮わついていたのかというコトを思い知った――。







『恥ずかしい』とか言うんだろうと思ってた。










だけど、俺に聞こえたのは









『怖い』





という言葉。















『“幸せ”だからこそ“失う”のが“怖くなる”――。』






ただの“言葉”じゃない。



“彼女”の“心の声”を聞いてしまったら、もうココが風呂場であるとか、“段階”云々は俺の頭から一切消え失せた。








俺にすがり付く小さな身体を抱いて、







もう“一人”じゃないんだ――





“俺がいる”









それだけを伝えたい“想い”しかなかった――。









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