君のその手を
□10章:確固たる存在に。
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朝――。
ベッドサイドに置かれた時計のアラームが鳴る。
その数秒後、白い細い腕がニョキッと布団のナカから這い出た。
勿論俺の腕じゃない。
…その腕はカチッとアラームを止めるとまたモソモソと戻ってきた。
5分後――10分後と同じような行動が繰り返されるが彼女は起きない。
起きないんじゃなくて、“起きれない”か…。
俺にすれば普段目覚めはイイほうとは言えないのだが、彼女が腕の中で寝ている現実を目にしてしまえば自然と頭が冴えていた。
一方、彼女は“昨夜の行為”の激しさを裏付けるかのように中々目覚めるコトができないようで…。
あー…、仕事サボりてぇなぁ…。
とは思ってもそうはいかないのが“現実”。
このままこの温もりを抱き締めたまま二度寝をしてしまいたいトコロだったが、彼女も日勤だから起こしてしまわねば二人揃って遅刻は免れない。
「渚…朝だぞ…。」
「……。」
「おーい。遅刻すんぞ…。」
「……ゔぅ…ん…。もうちょっと…。」
掠れた声を出しながらモゾモゾと動く彼女――。
抱き締めていた腕を緩めてやっても、起き上がるような気配がない。
「渚…起きねぇとまたヤりたくなるぞ…。」
「……ん…それは無理です…。身体が…痛い…。」
そう言いながら漸くムックリ起き上がった彼女。
だけれども依然として“身体”と“意識”の繋がりが不完全な様子でグラングランと揺れていた――。
そして、日の光に照らされた身体に無数に残っていた“赤い痣”と彼女の“髪”を見て、大分無理させてしまったんじゃないかと少し反省――。
「渚…スッゲェ頭してんぞ…。」
「…ぇ…?頭…? …うわっスゴい絡まってるー!!しかもはだっ、裸だしー!!」
「……。」
やっと“夢”の世界から“現実”に戻ってきたらしい渚は、『どどどどどうしよう〜!!』と叫びながら、またもや布団に潜ってしまった。
今更何を言ってんだ。
『どうしよう』も何も、“裸”を見られるコト以上の“恥ずかしいようなコト”を散々俺に見せたくせによぅ。
「…先生、ちょっと目瞑っててくれません?ベッドから出たいんですが…。」
「あ?フツーに出ろよ。」
「…いや…その…“見られてる”と出れないんですケド…。」
「だーかーら、昨夜腹一杯になる程“見た”つってんだろうが。」
「んなっ///////!!」
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