君のその手を

□8章:“お仕置き”か“ご褒美”か。
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軽やか(?)に車を降りて、そのままマンション内に入る先生の後ろを着いていこうとしてたのだが、おもむろに手を掬われてギュッと繋がれた。

さっきもそうだったが、有無を言わせないような一瞬のタイミング。

当然のごとくバクバクと心臓の音が上がる。

そんな私の胸の内を知ってか知らずか、チラリと見上げた先生の顔は上機嫌そのもので、車のキーを指に引っ掛けてクルクル回して口笛を吹きながらエントランスをずかずかと進んだ。

歩幅広いから着いていくのも大変だ。けれど…



あぁ何か新鮮…
ホントはこんなカンジなんだ…。

病院内ではこんな甘々な先生は見たコトがないし、お酒の席でも余り羽目を外したりしない。

まぁお酒の席でも他の先生方やスタッフ達に相談事を持ち掛けられたりされてるからいつもシビアな内容を語り合ってるという感じが多かったように思う。


兄貴肌というんだろうか。
厳しいけれど慕われてる。


…でも、今日の先生はずーっとニヤケっぱなしというか、何というか…

今までの印象からすれば、手を繋ぐことなんてしないんだろうな、という印象を持っていたからホントに意外だった。




そしてエレベーターを待っている間、ミラー状のドアに映った自分達の姿にドキリとした――。

客観的に見てしまった。
そして気付く。

余 り に も 極 端 で は な い で す か――

何ていうか…あの歩行者専用道路の標識みたいな――




「先生…身長何センチですか?」

「んあ?多分185くらいじゃねぇかなぁ…って何ヘコんでんだよ…。」

「…ぃぇ、ヘコんでなんかいません…。」

「フーン、じゃあオマエの身長教え…「教えません。」

「即答かよ…。人の身長聞いといて自分のを教えねぇとはな…まぁ俺の目測で150か。」

「なっ!?153ありますから!!」

「ブハッ!教えてんじゃねぇか。…しかも意地になって訂正するホド差があるワケでも無ぇのに…!!」



しまった。

たった3cmにムキになったが為に墓穴掘った。


「………。」


クククと身を屈めて笑いを堪える先生。



聞かなきゃ良かった。
言わなきゃ良かった。

そう思えども後悔先に立たず――。




「…ホラ、そんなコトでショゲんな。エレベーター来たぞ。」


グイッと手を引かれて乗り込んで、ポチッと8階のボタンを押すと動き出すエレベーター。



ああ今度は完全な密室。

身体中の神経が繋がれた手に集まってきて、耐えきれずその手を引いてしまいたかった。

というか、汗ばんでしまってるのが嫌という程分かる。

でもその手は離されるどころか繋ぎ直され、指と指を絡めた恋人繋ぎに――


!!!

その先生の行動に思わず顔を見上げてしまう。


…と、



ニヤリと口角を上げた笑みで 見下ろされた――





絶対、確信犯だ。






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