君のその手を
□7章:その瞳とその唇に。
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「…やっぱり俺ン家来い。」
渚の呼吸が落ち着いてきた頃を見計らって俺はそう告げた。
もうこうなっては渚を家に帰す気は無い。
あの手この手という無駄な駆け引きはもう無用だろう。
今、彼女は俺の腕の中。
やっと手に入れた“宝物”をすぐに離してしまうほど、俺は甘くはないし、余裕があるわけでもない。
今ここで身体が少し離れるだけでも嫌なのを彼女には伝わっているだろうか――。
「え…でも…先生の家は緊張しちゃいます…。今日は色んなコトが有りすぎて…その…頭がパンクしそうっていうか…お宅には後々お邪魔しますから…。」
伝わってない。
それでも俺は諦めなかった。
押してダメなら引いてみろってんだ!!
「………俺ん家が緊張するっつーなら、じゃあ今日は渚ン家な。それなら問題無ぇだろ?俺は渚とまだ一緒に居たいんだ――。」
…引いてねぇか。
まぁこの際アウェーでもホームでもどっちだっていい。
俺は渚と一緒にいたかった。
むしろ渚ん家のほうが居心地良く過ごせるかもしれねぇ。
あののんびりした空間は癖になる。
渚の顔を覗き込むようにして伺い問うと、渚はポーっと頬を赤くしてコクンと頷いた。
漸く頷いてくれたその了解の返事に、よっしゃー!!と心ン中でガッツポーズを決めた。
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