君のその手を
□7章:その瞳とその唇に。
4ページ/7ページ
俺はその“覗き見している手”を掴んで顔から引き離す。
ギギギ…という音がしそうなくらい抵抗していたが、それはやっぱり男と女の力の差。
「諦めろ。」
「あの…、ドキドキして心臓壊れそうなんですけど…。」
「ハハッ、キスくらいで壊れられたら俺が困るなぁ。」
漸く覚悟が出来たのか、一度ギュッと目を瞑ってから俺を見上げた渚――。
俺が渚の瞳に映る程の至近距離――
やっぱり近くで見ると益々吸い込まれそうだ――。
その瞳と
その唇に――。
渚を抱きしめる腕の力をグッと強めて抱き寄せながら顔を近づけると――
渚の瞼がゆっくりと閉じた――。
チュッ…
触れるだけのキス。
チュッ…クチュ…
感触を確かめた後は少し甘噛みしてみた。
「ん… ハァ… ん…」
渚から洩れた声にゾクリと粟立つ感覚が全身を駆け巡り、脳内を刺激する。
艶っぽいそういう声を聞き馴れていないワケじゃなかったハズなのに、渚のその声を聞いた途端、一気に理性がブッ飛びそうだった。
今まで付き合った女達と何が違うのか。
唇の感触なんて誰だっておんなじモンだった。
でも“何か”が違う。
突き抜ける“何か”が違う。
感じる“何か”が違う。
冷静じゃいられなくなる。
ソレだけは分かった――。
「渚…」
「は…ぃ…」
名前を囁くように呼ぶ。
返事を返した渚の薄く開いた唇を俺は見逃さなかった。
一気に口内を侵食するように舌を割り入れ、渚の舌を探す。
「…ンン…ハァ…ん…」
クテッと渚の身体の力が抜けたのが腕に伝わる。
腕全体で背中を支えながら後ろ髪に手を回して、奥に奥に、深く深くと角度を変えて渚の柔らかい舌を捕らえ、絡めた。
俺のシャツをギュッと握る渚の仕草がまたいとおしい。
その合間合間の吐息さえも飲み込んでしまいたかった――。
・