君のその手を
□6章:真っ白で音の無い世界。
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『私が臆病で』
『“さいご”の彼の言葉を信じてる』
臆病?
さいご?“最後”?“最期”?
“信じてる”って何を?
渚が言ったその言葉の意味が分からなかった。
キーワード的な言葉が出てきたものの、未だ核となる部分が見えてこない。
渚は俺の方を向かず、真っ直ぐ前を向いたまま。
少し手を伸ばせば触れられる距離にいるのに、触れてはいけないような、遠くにいるような感覚さえした――。
でも…
でも俺は渚のコトが知りたかった。
その“核心”に触れないといけない気が直感的にしたんだ――。
「あのさ…、渚が言いたくねぇっつーんなら無理には聞かねぇケド…その話、聞かせてくんねぇか…?」
「いえ…、別に言いたくないというワケではないんですが…ただ…」
「ただ…?」
「先生のテンション下げちゃうような話ですよ…?だって…
そう前置きされた言葉から語られ始めた渚の話に――
『彼は病気で亡くなったんです』
思わず息を飲んだ――。
哀しみに溢れた過去の話を少し顔を俯かせながらゆっくりと俺に話し始めた渚を黙って見つめてるしかできなかった――。
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