君のその手を
□5章:重ねた手から伝わりますか?
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「喜多さん、また近いウチにくっから。政宗とも最近顔会わせてねぇし…。まぁそん時はよろしく頼んます。」
「ええ、また是非いらしてください。今度は夜にでも来ていただけたらお酒もゆっくりとお楽しみになれるかと。ね?元親さん、渚さん。」
「は…?あ…いや、まぁそうっスね。」
また来れたらいいんだがな…もちろん渚と…。
チラリと目線を渚に向けた。
「あ…でも私は先生が誘ってくれない限りは来れな…「じゃあ連れてくる。」」
「じゃあ次は割り勘…「却下。」」
「えー…「また『えー』って言うな。」」
俺達のやり取りを『本当に仲睦まじいですね』と笑いながら見ていた喜多さんは、今日の流れ的なコトは知っている。
渚が手洗いに立った時に聞かれたのだ。
『“結婚式”はいつですの?』
『け…結婚式!?』
…と、イキナリ飛び越えた発言をされ、慌ててコトの成り行きを説明したが、喜多さんは俺達の格好と仲の良さから結納をしてきたと当初から思いこんでいたらしい。
確かに正月や成人式でもない限り、振袖なんて格好は目にすることがない。
勘違いされてもおかしくはなかった。
『まだそんな関係ではない』と喜多さんに説明したが、
『でも元親さんは渚さんを“只の友人”だとは思ってないでしょう?渚さんを見る目がとても優しくて穏やかな表情をしていましたもの』
…と、ズバリ言い当てられ、今後の思惑などを話すハメになってしまった。
で、冒頭のセリフが出たわけである。
「では渚さん、元親さんとまたご一緒の来店をお待ちしております。」
「は、はい!!今日はどうもご馳走様でした!!」
どちらも礼を交わすが、渚の方はどう見ても体育会系であるのは変わりがない。
対して喜多さんは落ち着きや艶っぽさを兼ね備えた大人の女である。
渚ももう少し歳を重ねれば喜多さんみたいになるんだろうか。
でもそれはそれで心配事が増えるかもなぁ…。
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