君のその手を

□4章:運命への導き。
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話を聞くと、正確には渚の血縁関係にあるのが叔母である総看護師長。

まぁそれはトップシークレットだったらしいので俺が知るワケもないが、並べて見比べると…成る程、似ている。

科長夫婦の子供は3人とも男だった為、科長にとっては渚を娘のように可愛がっていたようだ。


でもその可愛い姪っ子も年頃となったワケだが、『男の“お”の字も聞かず、バイクばっかり乗っている』と言う母親からの後方援助要請と相まってお見合い作戦へでたそうだ。

だけれども、いくら相手が金持ち・高学歴だとしても、『興味ない』『行きたくない』『会う気無い』と渚は尽く拒否したようで。

悩んだ結果、渚には事前に知らせず、今日の強行策へ踏みきったという――。


趣味が同じというコトで俺が人選されたようだ。

今日こそ科長の元で仕事してて良かったと思った日はない。

じゃなきゃこんな偶然は有り得なかった。



一方――

渚は最初こそ膨れていたものの、叔母夫婦や俺と会話をしているうちに徐々に機嫌を戻しつつあった。

汗だくだった総師長も、普段からは想像出来ない程にオロオロしていた科長も今はのんびりと茶と茶菓子を堪能している。



「先生…?私とお見合いだって知ってたんですか…!?」

「んぁ?知らねぇからあんなに驚いたんだろうが…!!見合いのコトは1ヶ月前位には言われてたんだけど上司命令みたいなモンだから断れなくてさ…。それに全然気乗りしてなかったから昨日までスッカリ忘れてて…慌ててコレ、クローゼットから出してきた。」


そう言って着ていたスーツを指差しながら科長に聞こえないように小声でコソッと言うと、渚は『先生らしいですね。』と何故かホッとした様子でクスクス笑っていた。


『でも似合ってますよ。』


とも付け加えて。


よく言うよ…。最初、吹き出してたくせによぉ…。


まぁ可愛いから…許す



「…んで、相手が科長の姪だっつーのだけは聞いてたが、まさか渚だったとはなぁ。何で黙ってたんだ!?」

「あの…それは…特別扱いされたくなかったからです…。私が外科科長と総看護師長の姪って周りが知ったら気を使うだろうし、名字も違うからバレないかなぁと思って。…あと、先生とは仕事とは別のほうで仲良くなったワケだし…普通に接して欲しくて…本当はバレたくなかったんですが…。」

「まぁそれがバレたらみんな固まるだろうな…。まぁ俺としては見合いの相手がオマエで良かったぜ?」



そりゃ色々と。

チャンスが広がったってことだ。

コレを機に一気に近付けるかもしれねぇし、初っぱなから科長公認だし。


「そ…そうですか…?」

「あぁ。俺な…、ぶっちゃけこういう堅苦しい場は苦手でさ…けど、渚だったら話しやすいしな。」

「それ…同感です。」






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