君のその手を
□4章:運命への導き。
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噎せて吹き出した茶を御絞りで拭いながらもその視線は渚から外すコトができなかった――。
パッチリと大きな目を強調するようなメイクだが決して濃いワケじゃない。
そして淡いピンク色の口紅。
黒地に桜柄の模様があしらわれた振袖。
…だけどすっげぇ仏頂面の横顔。
視線は明後日の方向を向いている。
でも紛れもなく渚だ。
息を飲んだ――
また噎せた。
普段から化粧は薄いけど、そのままでも十分可愛いと思っていた。
でも…目の前に呆然と突っ立っている渚は、本当に渚だろうかと疑いたくなる程、可愛いなどという言葉より綺麗だという言葉がピッタリだった。
「ぇ、先生…何でココにいるんですか…!?」
茶を連続で噎せたせいでやっと渚が俺を見た。
そして目を丸くして驚愕の声を上げてワナワナと震えながら俺を指差した。
「渚こそ…何で…!?」
「オマエ等、知り合いだったのか!?」
驚いていたのは俺達だけじゃなかったらしい。
口をあんぐりと開けながら俺と渚を交互に見ている科長夫婦。
「やだもー先生…!!その格好…別人みたいですね…!!」
「なっ…!?オマエだってその格好は何だよ!?」
「わ、私だってこんな苦しいの着たくて着たわけじゃありません!!無理矢理そことそこの叔父叔母に着せられたんです!!しかも見合いだなんて全然知らなかったんですから!!」
「「コレコレ…渚、落ち着きなさい…」」
あぁ…喋り出すとやっぱり渚だと確信するが、それぞれの部署のトップ2人に向かってビシッと指を差す渚はなんか強く見えた。つーかスゲぇ光景のように見えた。
そしてオロオロする科長夫婦に宥められ、“プーッ”と膨れっ面をして、複雑そうな顔をしながら座布団にポスンと座る渚。
つられて俺も渚の正面に座った――。
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