君のその手を

□4章:運命への導き。
2ページ/10ページ


***********



『カッコーン…』

純和風の部屋の外にある庭から鹿威しの音が響く。

相手が到着するまでの間、黙って座ってるのもナンだからと窓際に立って、新緑が映える見事な日本庭園を科長と共に眺めていた。



「遅いなぁ…悪い元親…待たせちまって…アレは見かけに寄らず強情でなぁ、バイクにしか興味がなくてよ…」


ピクッ…


茶を口元に運んでいた俺の手が科長の言葉に反応した。



「科長…今何て…「お待たせしました。」」


俺が科長に聞き直そうとしたところで、部屋の襖がスッと開いた。

視線を向けると、そこには汗だくの総看護師長が――。



そう、ウチの科長と総看護師長は夫婦である。

仕事の上でも世話になっているが、独身の俺を度々家に呼んでくれたりして飯をご馳走になっていたというのもあり、今回のお見合いを断れなかった最大の要因だ。



「大丈夫っスか…?スゲェ汗ですケド…。」

「あぁ…元親先生待たせちゃってゴメンなさいねぇ。ホラっ渚!!入ってきなさい!!失礼でしょ!!」



は…?え…渚…?


同じ名前だが…まさかアイツなワケねぇよな…。

そう思いながら、目線を襖の奥に向けたその先から不機嫌そうな顔で部屋に入ってきたのは――



「ブッ!!ゲホっ!!ゲホゲホ…!!おまっ…ゲホ…何で…?」


盛大に茶を吹き出した上に気管に入ってしまって思いっきり噎せてしまう。






だってあり得ねぇ!!


何で渚がココにいるんだよ!!









次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ