君のその手を
□3章:響くのは誰の声?
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『ピピピ♪ピピピ♪ピピピ♪』
突然のアラーム音が渚の携帯から鳴った。
極力音を立てないようにしていた中で、その音が部屋中に鳴り響いた為、俺の心臓は飛び跳ね、思わず息を潜めながら一歩下がった。
『うーん』と唸りながらモソモソと毛布の中から携帯に手を伸ばす渚。
目は閉じたまま、器用にも携帯を一発で掴み、アラームを止めた。
そしたら今度はまたそのまま携帯を握ったまま動かなくなった。
起こすべきか。
起こさないべきか。
俺の昨夜の記憶が確かなら、渚は今日は準夜勤務だったハズ。
今はちょうど6時。
起きるにしては早すぎる。
そうこう悩んでるうちにまたアラームが鳴った。
「はいはーい…起きますよ…って、…先生ぇ!?」
ゆっくりと上体を起こしながらうっすらと目を開けた渚が、俺の姿に気付いたらしく俺の顔を見た直後、パチクリパチクリと瞬きをした。
んでもって『どわ〜っ!!』っと叫びながら飛び起きた。
「オウ、おはようさん。」
「お、おはようございます…。あの…いつからソコに…?」
「ん…?10分くれぇ前か?」
『全然気付かなかった…』と顔を両手で隠しながら項垂れた渚。
スッピンと寝顔を見られたのがショックだったらしい。
俺にとってはお宝モンだが。
「あのさ…昨夜、悪かったな。俺、相当酔ってたんだろ?」
とりあえず慌てふためいている渚はほっといて、昨夜のコトはちゃんと謝罪をしておかないといけない。
「えぇ…。猿飛先生とサヤカ先生は他の方達と二次会に行ってしまって私達は取り残されたんです…。で…先生も相当酔ってらして、送ろうと家の住所を聞いたんですが…『帰らない。』って言い張って寝てしまったので…しょうがなく私の家に…スイマセン!!勝手に連れ込んだりしてー!!」
ポツポツと昨夜の状況を話してた渚だったが、後半はものすごい勢いで平謝りしだした。
それを見て俺も流石に慌てた。
「イヤイヤイヤ…!!何でオマエが謝んだよ!?むしろ置いていかれなくて感謝してんだから!!しかもベッドまで占領しちまって…。」
猿飛だったら床にゴロンと真田と共に寝かされてただろう。
店に置いてかれた可能性だってある。
それが今朝はどうだ?
寝心地の良いベッドに軽くて暖かい羽毛布団。
まるで読んでいたかのように置かれていた水分と濡れタオル。
渚だってシラフじゃなかったハズなのに、ここまで気を遣わせてしまって…。
「あの…折角ですから朝御飯食べていきませんか…?一度家に戻られるにしてもまだ時間に余裕ありますし、作ってる間にでもシャワー使ってもらって構いませんから…。」
「は…!?ソコまで世話になるワケにいかねぇだろ…!?」
「私は別に構いませんよ…?一人分作るのも二人分作るのも大して変わりないですので…。」
もうちょっと居てもイイのか…?
しかも朝飯食ってもイイってーのか?
やっぱコイツはイイ奴だ…!!
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