君のその手を
□2章:大人でも“恋”をします。
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勤務終了後、猿飛と待ち合わせた後の数十分後、街からは少し離れているこの場所に着いた――。
「何でこんなトコに人がいっぱいいんの…?」
「峠だからに決まってんだろ。」
「…いや、峠なのは分かるんだけど…。」
そう、ココはバイク乗りや走り屋達には有名な峠。
主幹道路とは違い、県道の為、昼夜問わず一般車の通りは少ないから猿飛が知らないのも無理はない。
俺も久しぶりに来たが…何でこんなに人が多いんだ…?バイク人口は年々減ってるっつーのに…。
「なぁ…今日ココで何かあるのか…?」
俺は集まっていた群衆の中の一人に声を掛けた。
「え?今日は最近噂になってる人が来てるみたいなんです。その人スッゲー速いらしくて誰も勝てないらしいっすよ。」
「それって女か…?」
「そうっすよ。オニーサンも噂を聞いて見に来たんっすか?」
「…まぁそんなもんだな。」
噂の人って…アイツどんだけなんだよ…。
「俺もさっき来た時に、その人とスレ違ったんです。慣らししてから下に走ってったみたいだったので、そろそろ上がって…って来た!!」
俺の耳にも届いたその音。
群衆も道路側に身を乗り出し、その方向へ向ける。
姿はまだ見えないが音は段々と近付いてきた。
パァァァァ…
パァァァァ…
パァァァァー
来た――!!
パァァァァー
闇夜を引き裂くような爆音と共にやってきたバイク。それは一瞬で。
“N○R400Rのロスマンズカラー”
メットから長い髪を靡かせながら、『ソレ』は地面スレスレでこのキツいコーナーを信じられないスピードで俺達の前を駆け抜けて行った。
それはそれはもう一瞬で――。
『スゲー!!』
『あの人『女』なんだってよ!!』
『マジかよ!!』
『信じらんねー!!』
信じらんねぇ…。
俺もアレほどまでだとは思ってなかった。
あのバイクに乗ってると聞いた時点でも驚いたのに、いざ乗ってる姿を見て、あまりの一体感に唖然としてしまった。
「ねぇチカ先生――まさかさっきのが…?」
「あぁ…渚だ…。」
「趣味の域超えてない?」
「俺もそう思う…。」
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