short dream
□拍手御礼文〜2013.07.10
1ページ/1ページ
※長編の政宗さん話『貴方の左手』の中で書かなかった慶次と政宗のやり取りです。
「…ねぇ、あの娘といつから付き合ってんのさ?」
「Ah?…2週間くれぇ前…か。」
「あーやっぱし?何かそんな感じがしたんだよなぁ。でも何か今までとは大分タイプが違くないかい?いっつも高飛車でプライド高そうな女の子とばっか付き合ってたじゃん。…なんていうかあの娘はあどけないっていうカンジがメッチャするよね?」
「オマエ…いつドコで見てたんだよ…別にどうだってイイだろ。」
カウンターで洗い終えたグラスを拭いていると、帰り支度を整えた政宗が目の前の椅子に座って財布からカードを出し俺にスチャっと渡した。
いつ見てもイヤミにしか思えないブラックカード。
何年か前はプラチナだったのに一体今はいくら稼いでいるんだろう。ゴールドでさえ滅多に見ないっつーのにさ。
いっつも一人でフラーっと来て、一人前だけ食って帰るのに現金で払って行ったコトがないこの伊達男。
いつドコで見てたって言われてもアンタほど色んな意味で目立つヤツなんていないと思うけど?
街で見掛けた時はいつも女と一緒だったじゃん。声掛けた事ないけどさ。
でもそんな政宗がこの店に彼女を連れてくるなんて初めての出来事で、俺は思わず覗き込んでしまったんだ。
そしたらその彼女、一瞬肩を竦ませてさ政宗の後ろに隠れちゃったんだよねー。
多分俺がデカイからかなー。
もーなんていうかその反応がメッチャ可愛く見えたんだよねー。
テンパりながら挨拶してくれたしー。
それに、
「政宗がさー女の子と手を繋いでるのって初めて見た気がすんだよねー。高校ン時もさー相手のほうから腕を組まれるほうだったじゃん?」
「…ンなコトねぇよ。」
しかも、
「…そのマフラーさ、彼女のでしょ?店に入って来たときもアレッて思ったけどさ、今もまーしっかりと巻いちゃって〜。ねぇアンタどうしちゃったワケ?」
「……黙ってろ。」
そんな怖い顔しちゃっても効果ないからね?
そのピンク色のマフラー、超似合ってるよ。ププっ…!!
「何かさー昔は『俺色に染めてやるぜ』って感じだったけど“染められ”つつあるね?」
「テメェ…それ以上言いやがると、もう金輪際ココには来ねぇからな!?」
「えー?そりゃ困るなぁ。でも彼女がまた来たいったらどーすんのさ?」
「潰れたって言う。」
「ちょっとソレ酷くね!?ウチ結構繁盛してんだよ!?」
「ンなら俺の力で実際に潰すか。」
「ちょ、ちょっと!!マジでやりそうだしっ!!まつ姉ちゃんに怒られるから謝る!!」
「だから『黙ってろ』って言っただろうが。」
ひーっ冷や汗かいたー…
茶化すのも程々にしとかなきゃな…
「…でもさ、「Ah?まだ何か言う気かよっ!?」
「…でも政宗が今までに会ったコトない感じの娘じゃないかい…?何か不思議と惹き付けられるようなもの持ってるカンジするなぁ…。」
「…ああ、アイツだけは大事にしないと、っていつも思ってる――。」
「……、へ、へー…。…うん、そうしたほうがイイよ…絶対――。」
いやもう絶句。
そんな台詞をこの男の口から聞けるとは。
それにそう呟いた時の政宗の顔は、長年友として付き合ってきた俺が見たことないくらいの穏やかな顔してて――
何だか人が変わったように見えた――。
.