HIKAGE SERIES
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少し早く彼の泊まるホテルについてしまい、ロビーで一服しながら待つこと30分。彼は相変わらず時間には正確だった。
「待ったか?」
『待ってない!』
「そうか、連絡がきたということは終わったのか?」
『まぁ、素晴らしい結果が出てくれたから…じゃなくて、さぁ行こう!アタシのオススメのお店があるの!』
アタシは彼の腕を引き、アタシ行きつけの店に向かった。街中を彼と腕を組みながら歩けるなんて、凄く幸せだった。
店に着き中に入ると、いつもおなじみの声が聞こえてきた。
「いらっしゃ〜い…おう、アリスじゃね〜の!ひっさしぶりだな!」
『こんにちは!研究で缶詰めになってたから。』
「身体壊すなよ…で、そちらは?」
『学生時代の恩師なの…』
「おうそうかい、じゃあスペシャルメニューを用意しないとな!」
『任せたよー!』
アタシは彼の腕を引き、アタシのお決まりの席に腰掛けた。
「ここにはよく来るのか?」
『まぁ、研究所から家までの間にある店だからちょうど良くて』
「自宅か?1人で暮らしてるのか?」
『一人じゃなかったら、誰と暮らすんですか!研究所に寮もあるんですが、気分転換するには1人で暮らす方がいいかなと思いまして』
この五年の間に起きたことを事細かく彼に報告した。彼は黙って聞いててくれたけど、どこかいつもと違う気がした。
それもオーナーが作った美味しい料理を食べてたらそんな気も忘れてしまってた。
でも、
事件はデザートを食べてる時に…
「あー、そういやアリス!ガイとなんかあったのか?」
『え?』
デザートを運んできたオーナーが何故か、ヤツの名前を出してきた。
『ガイがどうしたって?』
「昨日の夜、店にきてよ閉店だっていってんのに出て行かないから、様子をみてらぁ、あいつずいぶん酔ってたなぁ」
『だからなに?』
流石に彼の前でヤツのことは出したくないのに…オーナーは知らないのだから仕方がないか。
「あー、だからよ。いい加減、はっきりさせてやれよ、あいつ本気みたいだからよ…お前だって付き合う気あるんだろ?まぁ、じゃないとあんなに仲良くないよな?」
言ってしまった恐れていた、ことを…恐る恐る彼をみれば、黙々とデザートを食べていたが、黙ってる彼こそ1番怖いのに…
『オーナー、その話はまたあとでにして…教授の前なんだから…』
「おお、そうだな、すまないすまない」
オーナーはテーブルから離れキッチンに戻っていった。
「我輩は別に構わないが…ガイと言う男は、あの時入ってきたやつか?」
『え?ああ、うん…あの研究所では同期だから仲良くて…』
「そうか、仲が良いと親密の仲になっていくのですな」
『き、教授、そういうわけじゃ…』
何だろうこの言い回し…
「じゃないと?外で倒れこんでいたのはそう言うのではないと?」
『…っ』
何で庭のあの時のことを知ってるの…
「5年もあると心境も変わるものか…見てなければいいと思ったのか!」
何て言えばいいかわからなかった、5年も空いてしまうと何を言おうとも信じてくれない…
『あれは違う…』
「それを信じろと?5年も何もなかったのはそういうことでは?」
アタシはどうしたらいいのかわからなかった…
「我輩はこれで失礼する。帰国の準備があるのでな」
立ち上がりアタシに背を向けた彼の背中に向かって…
『待って、教授!』
歩き出そうとした彼が立ち止まりアタシの方を向くと…
「5年たっても、そう呼ぶのか…ミス・ファーシム」
え…?
そのまま立ち去る彼を引き止めることはできなかった。
つづく