□天使のいる町
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 とある日の、とある夕方。


 その日、かなでと響也のふたりは、かの元町通りにいた。


「――っはは、おまえそれ絶対におかしいって!」


「――うー…、そんなことないよー!だって響也もあの時はー……」


 賑わう商店街。


 じゃれあうふたり。


 これはいつものことであるのだが。


 唇を尖らせて、響也を睨み付けたかなで。


 もはや前は見て居ない。


 そしてかねがね、あの冥加玲士から、『落ち着きがない』とためいきを吐かれる。そんなかなでであるが故。


「あ、おま!ちゃんと前を――」


 かなでが、響也のあせった声を受け、顔だけ前を向いたときにはもう遅く。


「え――…、ぎゃっ!」


 どん


 と。少しの衝撃と共に、かなでは後ろ向きのまま、『何か』に衝突した。


(う。いた……)


 咄嗟に目を瞑ったかなで。


 視界を閉ざした彼女が身体で感じたのは、ヴァイオリンを背負っていたが故に受けた僅かな痛みと、柔らかな……、


(……?柔らか……?)



「!!」


 かなではあわてて振り返る。


 ぶつかったことを謝るため。


 精一杯、上を見上げる。


 けれど、そこにいたのは――



(うわぁ……!)


 かなでが思わず息をのんでしまったほどに美しい、男のひとだった。

 
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