笑顔の仮面
□第九話
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阿「終わったな」
『ええ』
本部艦隊に戻った珠李達は、商人の身柄を上層部へと引き渡した。
これから、彼には恐ろしい尋問が待ち受けている。
阿「大丈夫か?顔色悪いぞ」
『少し疲れただけ。ありがとう』
阿「色々悪かったな。うちの団長が」
『阿伏兎が気にすることじゃないわ。彼なりに、我慢はしてくれていたようだし』
阿「長い付き合いだが、あんな団長は初めて見た。相当あんたに入れ込んでるらしい」
阿伏兎の言葉に、珠李は薄く笑みを浮かべた。
『一時の感情よ。直ぐに戦闘狂に戻るわ』
阿「そうだとしても、あんたは立派にあの暴れ馬を手懐けてたよ」
『阿伏兎のお陰よ。それじゃあ、お疲れ様』
阿「団長には会わないのか?」
『どうせ最後に一戦相手しろとか言うに決まってるもの。二度と会わないことを願うわ』
そう言ってふわりと柔らかく微笑んだ珠李は、振り返ることなく去っていった。
阿「おいおい、それじゃあ俺が殺されるっての」
どうして止めなかったのかと、責め立てる神威の姿が目に浮かぶ。
阿「まぁ、そいつぁ俺の仕事か。…最後に手足がついてりゃ儲けもんだな」
そう言って過去既に失った片腕を眺め、諦めたように笑った。
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