笑顔の仮面
□第一話
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そこは、とある惑星。
たった今、春雨の手の内に落ちた。
『ふぅ…』
戦場に凛と佇むは…白い衣に身を包んだ細身の女。
真っ赤に染まった戦場には不似合いな、異様なほどに真っ白な衣の女の名は、珠李。
『どうか、安らかに…』
珠李は目を閉じて、死者へ弔いの言葉を掛ける。
そっと開いた瞳は、月下に金色に輝いていた。
『…。』
誰かの気配を感じた珠李は、憂いを隠した微笑みで振り返る。
「珠李、行くぞ」
『ええ』
共に惑星を落とした部隊の団長が珠李に声を掛けた。
「戦場のど真ん中で、勝利の余韻にでも浸ってたのか?」
『そう見えたなら、それでもいいけど』
「冗談だ」
珠李はニッコリ微笑んで歩き出す。
『行きましょう』
「なぁ…」
『何?』
「このまま俺の部隊に入らないか?」
『…。』
珠李の美しい笑みに魅了され、その笑みを自分の側に置きたいと口にした団長の言葉を聞くと、珠李から笑みが消えた。
殺気にも似た、冷たい視線が団長を刺す。
「っ」
『遠慮するわ』
「そうか…残念だ」
すぐに笑みが戻ったものの、先程とは違う棘の残る雰囲気に、団長は素直に引き下がった。
*