恋人はミュージシャン

Last Lovestory
3ページ/14ページ








ツアーは順調に進み、その合間でテレビ出演や雑誌の取材をこなす過密スケジュール



私達は大阪ドームでのライブを終え、今日はそのまま大阪に宿泊



明日は福岡へ移動する事になっている為、打ち上げを終え、早めに部屋へ戻って来ていた



(櫂…まだ帰らないのかな…)



櫂は打ち上げ会場から、何処かへ行ってしまい



ベッドサイドの時計は既に0時を回っている



実は、札幌で聞いた『翔子さん』の他にも『愛子さん』と言う女性ともツアーの間、何度か櫂が電話をしている姿を見ていて



だけど、どんな関係?なんて聞けないまま



モヤモヤは募るばかり



私の事は大切にしてくれるし



愛されてる実感はすごくある



けど小さな疑惑は、雪だるまみたいに膨らんで



自分ではどうすることも出来ないくらいになっていた










櫂「りぃ?りーぃちゃん?」



「うわっ!びっくりした…」



突然目の前に現れた櫂の顔



その驚く程の近さに、顔が熱くなる



「どうやって入ったの?!」



櫂「さとやんにお願いして、30分って約束で鍵借りたのっ、たこ焼き?食べるでしょ?」



櫂の手元を見ると湯気に鰹節が踊る、美味しそうなたこ焼き



「どうしたの?これ」



櫂「ふふっ、ここのたこ焼きは絶品なんだって」



テーブルの上にあるたこ焼き屋さんの袋を見ると、ここからは少し遠い住所が目についた




(このお店って確かかなり並ばないと買えないってテレビで言ってた…)



「…わざわざ買いに行ってくれたの?」



櫂「うん、お姫様に最高のたこ焼き食べさせたくて」



「櫂…ありがとう…っ」



私の為にそこまでしてくれた事がすごく嬉しくて



今までの不安もあってか、涙腺が一気に弛む



櫂「りぃ?どうしたの?そ〜かそ〜か、泣くほど食べたかったんだ?よしよし」



あやすように髪を撫でられ、その心地よさにささくれ立った心がまるくなる



「…っ…くっ…」



櫂「ふぅ〜ふぅ〜、ほら、食べて?」



櫂はつま楊枝に刺したたこ焼きを、私に差し出す



櫂「自分で食べるとか言わないでね?あーんして?」



ニコニコと笑う櫂の笑顔に、胸にかかったモヤが晴れていく



ちょっと恥ずかしいけど、櫂の手からたこ焼きを食べる



カリカリの生地の中はふんわりトロトロで、今まで食べた中でも一番美味しかった



櫂「どう?美味しい?」



「うん!すごくっ!じゃ櫂も…」



同じようにふぅふぅして、櫂の前に差し出す



櫂「んっ!あふっ!」



「あ!ごめんっ熱かった?」



櫂「な〜んちゃってっ」



ペロッと悪戯に舌を出す櫂に、私からも笑みが溢れる



櫂「やっと笑った、うん、やっぱりりぃは笑顔が一番かわいいねっ」



「櫂…」



どちらからともなく近づく唇



私はモヤモヤを全部晴らしたくて、何度も何度も唇を重ねた



櫂「…さすが敏腕マネージャー…30分という絶妙な時間を指定するなんて、何にも出来ないじゃんか」



「もう、櫂ってば///」



櫂「今夜は我慢するけど…覚悟しといてね?」



櫂はそう言って、またキスをして自分の部屋に戻って行った



さっきまでの不安が、嘘みたいに消えて



その代わりに温かい気持ちが広がっていた



(櫂を信じよう)



確かに気にはなるけど、櫂は私を見てくれてる



私はその幸せな気分のまま



眠りについた











翌朝───



龍「おはよう、なんだかスッキリした顔してるな」



「うんっ」



集合時間よりも少し早く、ホテルのロビーに降りた



櫂を信じると決めた私は、久しぶりにグッスリと眠れて



我ながら単純だとは思うけど、コンディションはバッチリ



自然と笑顔が溢れてしまう程



約束の時間になり、ロビーに来ているのは龍、雅楽、佐藤さんと私



雅楽「ったく、まだ寝てんのか?あの二人」



佐藤さんが様子を見に行こうとした時、丁度エレベーターホールに二人が降りて来た



櫂「瑠禾ちんゴメンって言ってるでしょ〜?」



瑠禾「櫂のバカ」



櫂「も〜けど、良かったでしょ〜?」



瑠禾「…っ///櫂キライ!」



佐藤「なんやもめてるみたいやけど…」



雅楽「どーせ瑠禾のお菓子食べたとかだろ?行こうぜ!」



(大丈夫かな?)



ケンカしている二人をそのままに、雅楽や龍が移動のバスに乗り込む



そうして、私達は福岡へと向かった









次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ