恋人はミュージシャン

Last Lovestory
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佐藤「おつかれさーん、今日のライブも最高やったなぁ!ホンマ興奮したわ」




たった今ライブを終え、熱の籠った身体で楽屋に入ると、中で佐藤さんが待っていた



佐藤「小さい箱も一体感があってええけど、やっぱドームは違うなぁ!」



そう、私達は今、ドームツアーの真っ最中



今日は札幌ドームでのライブだった



先月に出した新曲も、初登場1位で、現在6週間連続1位を保っている



そんな新曲を引き下げてのツアーはもちろん大盛況で



今日の札幌ドームも凄い盛り上がりを見せた



雅楽「当たり前だろ?俺達のライブなんだからな」



得意気に鼻を鳴らす雅楽、だけど初めてのドームツアーを聞いた時、一番興奮し喜んでいたのは雅楽だった



瑠禾「カニ」



佐藤「……?あぁ、分かった分かった、瑠禾はカニが食べたいんやな?よしなんぼでも食わせたる」



瑠禾「カニ、イクラ、ウニっ…!」



興奮気味に言う瑠禾に、いつもの様に櫂がちょっかいを出す



櫂「ルカちゃんカニ食べ過ぎると口が痒くなっちゃうよ〜?」



龍「カニは弱いが毒があるからな、人によってはそういう人もいるらしいが」




瑠「毒…」



櫂「それか泡吹いて横歩きになったりして〜」



「もう、櫂ってば瑠禾を脅かさないのっ、せっかく楽しみにしてるのに…」



瑠禾「……ルカニ…」



ボソッと呟いて一人笑う瑠禾



雅楽「それドラクエの呪文だろ?いいから、打ち上げ行こうぜ!」



櫂「あら〜意外だわ、ガックンってゲーマーだったんだね」



瑠禾「雅楽はツンデレでゲーマー…あとどんなカタカナがつく?」



佐藤「せやなぁ…ギターか?」



龍「佐藤さん、それはちょっと違う気が…」



雅楽「お前ら俺で遊ぶなよ!いいからさっさと着替えて行くぞ?!」







それから、皆でカニを食べて今日のライブの改善点などを話しあっていた



瑠禾は結局口が痒くなるまで食べると言い、今も1人黙々と食べ続けている



「瑠禾?お腹壊すよ?」



瑠禾「むぐっむむう…(大丈夫)」



龍「櫂が余計な事を言うから」



櫂「何の事〜」
♪♪♪〜



(あ…まただ…)



聞きなれた櫂の携帯の着信音



ゆきちゃんが亡くなって、私が櫂と付き合い出してからは、櫂の女性関係はパッタリと無くなっていたのに



最近頻繁にメールや電話をしているみたいだった



櫂「ちょっとごめん」



携帯のディスプレイを確認しながら、席を外す櫂



雅楽「ったく…最近おさまったと思ってたのにまた女かよ…」



(やっぱり電話の相手は女の子なのかな…)



言い知れぬ不安が胸に広がるのを感じながら



櫂が出て行ったドアを見つめる



龍「雅楽…」



諫める様に龍が言うと、雅楽は気付いたのかばつが悪そうに私に謝る



雅楽「悪い…」



「へへっ…」



大丈夫な振りをして笑っても、余計に虚しくなるだけで



胸の不安は消える事はなかった



佐藤「ほらっ、明日は朝から移動やしもう行こか?瑠禾、ええ加減にしとかんと次のライブ腹壊したら何にもならんで?」



佐藤さんが瑠禾をカニから引き剥がし、私達は店を出た



(あ…櫂…)



店を出た所のベンチに座り、まだ話している櫂の姿を見つけ胸が締め付けられる



(こんな…ヤキモチなんて妬いてたら櫂嫌がるよね…)



楽しそうに話を続ける櫂は、私達に気付いてなくて



佐藤「櫂、ホテル戻るで〜」



櫂「あ、ごめん翔子ちゃんまた連絡する」



(翔子…ちゃん?…やっぱり女の子なんだ…)



龍「りぃ?大丈夫か?」



「あ……うん、平気」



龍「無理するな…」



頭に触れる龍の大きな手が、凄く温かくて



私の不安を一瞬だけ忘れさせてくれた



櫂「あ〜龍ってばうちの奥さんに触らないでくれます〜?」



いつもの軽い口調も、今はヤケに感に触る



櫂「さ、りぃちゃん帰ろうか」



肩に回された腕



向けられる微笑み



それも全て嘘に見えてしまう



疑いたくないのに



信じたいのに



「櫂…外でこんなのはちょっと…」



やんわりと腕から逃れ、佐藤さんが手配してくれたタクシーに乗り込む



(なんか…逃げるようにタクシーに乗っちゃったけど、大丈夫だよね?)



続いて櫂と、龍も乗り込んで、タクシーはホテルにつくまで微妙な雰囲気だった






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