銀魂
□誕生日の夜に
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「あんだぁ?急に呼び出して〜銀さんこれでも忙しいんだぜ〜?」
「そうか、悪かった、ならば帰って構わんぞ?」
「いやいや、月詠ちゃん?(汗)嘘だから!銀さん暇すぎだから、誕生日の夜に帰れとか言わないで?ね?一人にしないで?」
今日は銀時の誕生日、わっちは吉原で育っていながら、恋愛なんかしたこと無かった
銀時に出会って、この男の強さと、懐の深さを知って…
わっちのこの顔の傷さえも包み込む様な暖かさを知って───
気が付くと好意を持っていた
「それで〜?今日めでたく誕生日の銀さんにナニさせようって訳?あれか?お前自分にリボン掛けて『わっちをあ・げ・るっ』とかそーゆープレイですか?」
「…すまん、そういうのが好きだったのか、気付かなんし、日輪にリボンを貰ってくる、部屋で待っていろ」
「いやいやイイから、ジョーダンだからっ!」
部屋に流れる沈黙
何て言ってプレゼントを渡せばいいのか…
晴太と日輪が気をきかせてケーキや飲み物をわっちの部屋に準備していた
「月詠ちゃん?取り敢えず乾杯とか?お前一応花魁の端くれだろ〜銀さんが気を使ってるよ?」
「あぁ…まぁ…飲みなんし」
シャンパンを開けてグラスに注ぐ
ゴールドの液体に立ち上がる泡
飲めば気楽に言えるかもしれない
「乾杯」
カチン
「乾杯」
一口飲むと、細かい泡が口中で弾けて、香りが広がる
もう一口
ヒック────
「銀時…わっちはぬしが…
好きだと言っているだろぉおお!!」
「しまったぁぁぁあ!コイツ酒癖悪ぃの忘れてた!」
フワフワする頭で、銀時に詰め寄る
「これはプレゼントじゃ、受け取れ」
「あ…ありがとうございます──────ってコレ何?」
「わっちのプレゼントが受け取れねぇとか言ってんのかぁぁ?!」
「いやいや、滅相もない!いただきます!いただきますともぉぉお!」
銀時の手に無事プレゼントが渡って、長時間の緊張から解放される
「うれしいか?」
「はぃ…けどコレどうするんですか?どう見ても鹿の頭の剥製ですよね?貴族の応接間にあるやつですよねぇ?
わかった、『手作りなのっ♪てへっ』とかそういうオチか?!」
「ぬし…やっぱり気に入らないんじゃろぅ?返せ」
銀時の手からプレゼントを取り返そうと手を伸ばす
「待てって、嬉しいから!ただ予想外っつーか、想像力の壁っつーか…オィ、やめろ、」
「いいから返せ!」
奪い返そうとするわっちと抵抗する銀時
いつの間にか、手を高く上げた銀時の懐の中に収まる形になっていた
ダンッ
一気に反転する視界
背中には畳の感触
目の前には、赤い瞳と
いつになく真剣な顔の銀時がいた
「俺は、お前が欲しい」
わっちを見下ろす銀時が、告げた言葉が
酔った頭を騒がせる
「銀…時…?」
「誕生日なんだ、好きな女がいりゃ〜何もいらねぇよ」
好きな女────?
「……女を捨てたわっちでもか?」
「捨てるも何も、お前は──月詠は俺にとっちゃ初めから女だったぜ?」
ゆっくり降りてくる銀時の顔
触れ合う直前まで見つめ合う
「誕生日おめでとう、銀と…」
最後の音は、銀時の柔らかな唇に呑まれ
初めてのキスを交わした
銀色の月光が優しく降り注ぐ夜
二人の宴は始まったばかり─────
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