NL novel

□夢からの贈り物
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あなたがくれるものは、どんなものでも宝物。

 

 

夢からの贈り物

 

 

最近、花の冠を作ることがマイブーム。
 

まぁそれは、彼とみるこの夢に限ってのことだけど。
 

「そういえば、凪」
 

そんな私をずっと見ていた彼……骸様が声をかけた。
 

「はい」
 

「君の誕生日はいつですか?」
 

突拍子もない質問。誰かに誕生日を聞かれたの、初めてな気がする。
 

友達なんていなかったし、親に祝って貰ったこともない。
 

「えっと……12月5日です」
 

「……え?」
 

「え?」
 

予想外の返答。あれ…質問の答え取り違えたのかな……。
 

少し焦りが生まれた私に、骸様はまた質問した。
 

「今日は、何日ですか?」
 

「え、えっと……」
 

もう0時は過ぎたと思うから、今日は12月の………。
 

…あ。
 

「12月5日……」
 
私の……誕生日だ。気付かなかった。いつも気にしなかったから。
 

骸様は軽い溜め息をした後、いつもの笑顔で私と向き直った。
 

「言えばいいのに…」
 
「すいません…。忘れてて……」
 

「謝ることはありませんよ。さて、どうしましょうか。何も用意してないですから……」
 

骸様は軽い思案をして、何か思いついたのか私の後ろに回って、私と背中合わせに座る。
 

「あの……骸様?」
 

「しばらく……こっちを見ないで頂けますか?」
 

「え…あ…はい」
 

……なんだろう。見ないでと言われると見たくなるのが人間の好奇心。
 

でも、彼が言うのだから従う。私は花の冠作りを続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

花の冠が作り終わって、私は4つ葉のクローバー探しをしていた。
 

骸様はまだ何かしているみたい。何をしているのか気になるけど、見ないでと言われてるから仕方がない。
 

……あ、4つ葉見つけた。
 

それを引き抜くのと、頭に何か乗ったのは同時だった。
 

「きゃ!……?」
 

頭に乗った何か。そっと触れる。
 

あれ……花の…冠?
 

自分が作った冠はちゃんと膝の上にある。ということは……。
 

「骸様…!」
 

振り返れば、いつの間に立ち上がっていて優しく微笑んでいる骸様。
 
「すいません。今用意できる物がこれくらいしか浮かばなくて」
 

「いえ!凄く嬉しいです」
 

骸様の手が私の頭に置かれる。
 

「凪……誕生日おめでとう」
 

今までで一番嬉しい……祝いの言葉だった。
 

「……ありがとうございます!」
 

こんなに心から喜べる誕生日は初めてだった。
 

頭の冠を取ってみる。私よくできている気がする。なるほど彼は完璧なのだ。
 

冠と一緒に……4つ葉がくっついていた。
 

骸様が、私の隣に座って手の冠を見る。
 

「クフフ……初めて作りましたよ」
 

「え……初めてですか?」
 

「ええ、いつも君が作っているのを真似してみたのですが……。クフフ、やはり凪には敵いませんね」
 

「そんなこと…っ。あ、そうだ…」
 

さっき見つけた4つ葉を自分が作った冠に付ける。
 

そして彼の頭に乗せた。
 

「…凪?」
 

「お礼です」
 

きょとんとしている彼に微笑む。
 

そんな彼も再び笑顔になった。
 

「それでは意味がないじゃないですか」
 

「いいんです。今日は最高の誕生日です」
 

あ…でも……。ここは夢の中。目が覚めたらこの冠は……。
 

「大丈夫ですよ」
 

「…え?」
 

「大丈夫です。また会いましょう」
 

そして……世界がぼやいていく。しかしそれは一瞬。
 

目を開けると……見慣れた天井。そして薄汚れた毛布。

 

ああ、戻ったんだ。

 

まだ嬉しさが残っている。それと一緒に……切なさも。
 

「……?」
 

少し違和感。ふと見回してみると……横にいつもないものが置いてある。
 

それは…あの冠だった。彼の幻術だろうか。
 

……幻でも何でもいい。彼からの贈り物には違いないから。
 

骸様……ありがとう。
 

私は冠を壊さないように優しく抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 

その日、何故か犬や千種が慌ただしかった。
 

その夜に二人からケーキを貰った。私は誕生日のことを教えていない。
 

これも、骸様からの贈り物かな。
 

本当に……今日は最高な日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

fin.

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