BL novel

□楽しみ過ぎて仕方ない
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オレと武が会える機会は、そう多くない。
主にイタリアにいるオレがジャッポーネに行くのにも、当然時間と費用が必要になる。ちょっくらジャッポーネ行ってくるでは済まない。まぁ一般人と比べれば言いやすいが。
金はそんなに気にする必要はない。こんな危険な仕事しているだけあって給料も普通と比べ物にならないくらい高い。問題は時間だ。仕事は平日休日関係なくやってくる。寝る間も惜しむこともあれば、仕事がなく腕が鈍りそうになる時もある。そんな不定期な仕事なのだ。
 

最近は休みといえる休みがなく、漸く時間が取れたところだ。
大きな山は越したため、No.2であるオレは不用になったらしい。複雑な気分だが、長期休暇を取れるチャンスを逃すつもりは毛頭になかった。
 

久しぶりに日本へ行ける。いきなり行って驚かすのも悪くないが、久しく聞いていない声を早く聞きたかったため長期休暇を取り自室に戻ったところで即電話することにした。
相手が出るのを待ちながら、なんとなく時計を見る。
 
午後8時。
 

ならまだ寝てないはずだ。
……………。
………何かが引っ掛かる。
何かを忘れているような気がする。
相手がなかなか出てくれないことに軽く苛立ちながら、頭の隅で引っ掛かるものの正体を探る。
 

………。
………。
…………あ。
 

「…………」
 
やべぇ!時差!時差!!
こっちが8時ってことは、あっちは朝の4時だぜぇ!まだ寝てんじゃねぇのかぁ!?
時差を忘れるとはオレとしたことが!
 

「…はぁい?」
 
「う゛お゛ぉい!!?」
 

これは切った方がいいだろうと思ったところで相手が出てしまった。
寝ぼけ声だったことからやはり寝ていたのだろう。少し罪悪感。
 
「…スクアーロ?」
 
「たっ…武…」
 
罪悪感を感じながらも久しぶりの恋人の声はやはり愛しいものだ。そう思ってしまう自分に思わず小さく笑ってしまう。
 
「…お早いモーニングコールだな」
 
「悪ぃ…起こしちまった」
 
「気にすんな。久しぶりに声聞けて嬉しいぜ。どうしたんだ?」
 
相手が出てしまったなら今更切ることもない。オレは当初の目的を果たすことにする。
 
「日本に行く」
 
「…え?ほ…本当?」
 
「あぁ、長期休暇を取った。会いに行ってやるぜぇ」
 
「マジで!?めっちゃ嬉しい!!待ってるな!」
 

予想以上の喜び様である。オレに会えることに喜んでると思うと嬉しい半面、照れ臭くなる。
 
「ガキ。喜びすぎだぁ」
 
「仕方ないじゃんか!会えるの久しぶりにだし!」
 
「まぁな。取り敢えず、用件はそれだけだ。いい子にして待ってろ」
 

たっぷり甘えさせてやるぜぇ。
その一言に久しぶりに照れた声が聞こえたことに満足し、電話を切る。
ガキと言ってしまったが、自分も何気に楽しみだ。久しぶりに会える嬉しさのあまりに時差を忘れてしまう辺り、オレも人のこと言えねぇなぁと思う。

 

会ったらまずは抱きしめてやるかぁ。というか抱きしめたい。よしそうしよう。
 
再会した時のことを考えながら、オレは滞在準備に取り掛かった。

 

 

fin.

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