BL novel

□疑問だらけ
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人生は本当、何があるのかわからないものなんだなとしみじみ思う。
前まではそんなこと考えたこともなかったが、最近は無意識の内にそう考えてることがある。
 
例えばリング戦。
 
敗けるとは思っていなかった。勝つ気満々だった。相手はまだ殺しも何も知らない、ガキ。
敗因はオレだ。奴に勝つためのヒントを与えすぎたのだ。故意でやったわけではない。言うなれば自滅だ。
しかし、あの刀小僧が最初の頃より強くなっていたのは事実。正直反則だと思う。
……だが、あんな楽しく戦ったのは、久しぶりだった。

 

普通ではない出会いだが、今は割りと仲が宜しいというのだから驚きだ。

 

リング戦終わって、怪我が完治してからも、オレは度々小僧に会う。
それは任務帰りだったり、ただの暇潰しだったりするわけで。
剣を交えたり、ただの他愛もない話に盛り上がったり。
 
…何故、オレはこいつに会いに来る?
 
そう思ったこともしばしば。
最近はそれに加えて小僧の傍に居ることに居心地の良さを感じている自分に疑問を抱いている。
誰かと一緒に居ることで気持ちが安らぐことなど、今までなかった。
 
…まさかオレは、山本武に――。



 

 


「スクアーロ?」
 
呼ばれて現実に引き戻された。
ずっと黙りこくっていたオレを心配そうな顔をして呼んだその少年は、先程からオレの頭の中を占領していた山本武だ。
さっきも述べたが、オレは度々小僧に会いに来るのだが、今もまさにそれで、ただの暇つぶしに来ていたのだ。
 
「大丈夫か?具合でも悪いのか?」
 
顔を覗き込んでくるものだから、つい顔を逸らしてしまった。
…何故かドキリとした。
 
これは初めてのことではない。先程の疑問を感じ始めた時から、何故かこいつの傍に居て不意に胸が高鳴ることがあるのだ。
こいつは多分、気付いていないだろうが。
 
「……何でもねぇ。」
 
「何でもなくないのな。ここ、皺よってる。」
 
ここ、と言いながらオレの眉間をつついた。
こんな些細なことでも、ドキリとする。
 
「ま、言いたくねぇならいいさ。でも無理すんなよ?」
 
そう言いながらこっちに笑いかける。小僧お得意満面の笑みで。

 

その笑顔の、なんと無邪気なことか。

 

――無意識に、体が動いた。
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