BL novel
□傷痕
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腕に数個。頬に一個。
それは、彼と修業する度にできる傷。
修業中は集中してるから痛みなど感じないが、今みたいにリラックスしてる状態だとヒリヒリ痛んで仕方ない。
「またツナに心配されるなー」
「テメェが修業不足なのが悪い!!」
怒鳴りながら治療してくれる、傷の原因である相手を見る。
顔には傷が見当たらない。
けど、左腕には一個、真新しい赤い線が見えた。
実力の差が見えて悔しくなったけど、その反面嬉しくもなって頬が緩んでくのがわかった。
「何笑ってんだ」
「やっとスクアーロに傷が付けられたと思って」
「フン、こんなの傷に入らねぇ」
腕の傷口に消毒液を染み込ませた綿を当てられて、チクリと痛んだ。それが顔に出てたらしく、スクアーロが意地悪そうに笑う。
「いい顔だな」
「うわ、ドS」
「まあな」
何が楽しいのか、その表情のまま腕の傷を一つずつ丁寧に消毒していく。
腕への治療を終えて顔に当てられると思われた綿はゴミ箱へ。
顔にはしないのかと疑問を抱いていると、その意地悪な顔が近付いてきて。
「…ッ!!」
ピリッと痛みが走る。生暖かくぬめるその感触に、心臓が跳ねる。
動けなくなっているとそれは離れて、相変わらず意地悪な顔がククッと愉快そうに笑う。
「楽しい」
カアァと顔が熱くなる。楽しいのは結構だが、俺は楽しくない。
笑うなとクッションで彼を叩いても、止めろといいながら笑うのを止めない。
攻撃を止めてふて腐れて見れば、表情が柔らかいものになり「悪かったな」と言いながら額にキスされる。
顔の熱をどうにかしたくて、とにかくスクアーロの胸に顔を押し付けるのだった。
それから数日。スクアーロといえばその次の日にイタリアに帰り、時々電話する程度で会ってはいない。
腕の傷は治って、痕も残ってはいない。
鏡で確認すれば、頬の傷も小さくなっている。
ツナに指摘されたが、オレは時々、この傷に触れて嬉しそうな顔をしていたらしい。
仕方ないと思う。
だって、これは大好きな人が付けたものだから。
スクアーロと一緒に居たという証だと思うから。
…もうすぐ消えてしまう。スクアーロが残した痕が消えてしまう。
………だから、会いにきて。
そして、オレに新しい傷痕を。
おまけ→