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□犬は従順であるべきだ
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犬の様だと思う。それも躾の行き届いた犬の様だと。

目先にいる犬に例えられた青年は今日も彼自身の主人である青年の後を保護者の様にして歩いている。否、保護者なのだろうが。
ほらルーク危ないだろ、大丈夫だってーのガイの心配症ー。
可笑しいといわんばかりに笑って後ろ歩きをし始めたルークをこけるんじゃないかと心配するガイはまるで子供の世話をする大型犬の様を思わせて思わず笑ってしまう。ジェイドどうしたんだよ、なんて顔を覗いてくるルークになんでもないんです、と笑いながら返せば怪訝そうな表情で見られた。
嗚呼、そういえば昔犬を飼いたいと言ったことがありました、と思い出す。あれ程人間に忠実な動物はいないだろう。当時の自分にはそれは魅力的で親にお願い(というほど可愛いものでも強請ったわけでもないのだが)したこともあったが、ネフリーがまだ幼いから駄目だと断られたのだ。軍人になってペット等とは無縁になってしまった今やそんなことは忘れていたのだが、思い出してみれば懐かしい。
いっそのことガイでも飼ってみましょうか、なんて冗談を言ってみる。なんのことかわからないと首を傾げるルークとは反対に動物扱いかよ、と苦笑するガイにお手、と手を差し出せば意味が分かったのだろうルークが耐えきれないというように噴出した。
「ルーク、」
「わりぃガイ、それ俺も思ってた」
「おいおい」
ひーひーと笑い続けるルークは暫くしてげほげほと咳き込んだ。笑いすぎたのだろう、その背中を摩るガイに自覚ないんですかと問えば自覚があってたまるか、嫌そうに顔を歪めた。その首でチョーカーが少しだけ揺れた。それがまるで首輪みたいだとは口には出さなかったが。
「ガーイ、私に飼われてみませんか」
「遠慮するよ」
旦那に飼われたら数日後には死んでそうだ、とガイは断ったそれにさっきまで笑っていたルークが確かに洒落になんねえ、と同意した。
失礼ですね、可愛がりますよ。それこそ彼であるならば愛でてみてもいいだろう、否、むしろ甘やかすのもいい。自分にだけ甘えるように躾けるのも素敵な提案に思えた。
動物を愛でるジェイドってのもそれもそれで気持ち悪いなと笑ったルークににっこりと笑い返した。

「ルーク、ガイをくださいませんか」
(彼に懐いている犬を躾けてみるのはどれほど楽しいことだろう!)



犬は従順であるべきだ
(少なくとも私の足許では)


お題配布元(なれ吠ゆるか


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