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□雨降りと君事情
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「雨が降ったくらいでそんなにいじけないでください」

ジェイドがため息まじりにそう言ったから思わず、う、と一声漏らす。と、急に雨が強くなった気がした。
確かにそうなのだ。自分は雨が振ったからいじけているわけで、ジェイドに怒られるまでソファーの上であーだのうーだのうなだれていた。その通りである。けれども。
「雨が振ったくらいって、あんた、俺が今日をどれだけ楽しみにしていたか」
わかってるんだろ、と聞くと、ええ、と返される。その言葉はあまりにもそっけない。その態度にもっとなんかいうことないのかよ、とぶつぶつ呟いていると乱暴に本の閉じる音がして、ジェイドを振り向く。コツコツとこちらに近寄ってくるジェイドの顔を伺いみると不機嫌なのが目にみてとれた。少し、ぞおっとする。
「別にあんなわけのわからない祭りが雨で中止になったことなんて、どうでもいいじゃありませんか」
「よくない!音機関フェスティバルだぞ!世界中の音機関がグランコクマに集まるんだぜ!」
「それが?」
「・・・」
冷たい。ジェイドからはまったく興味なんてないと言わんばかりのオーラが漂っていて、思わず言葉がつまる。そりゃそうだ。ジェイドは音機関に何一つ興味を持ち合わせちゃいない。以前必死で作り上げた音機関をみせたときだって、よかったですね、の一言しか貰えなかった。(あと貰ったとするならば、呆れたため息をひとつだけ)(悲しすぎる)その冷たさがなんだか悲しくて、あんた俺のこと嫌いだろ、と問うと、まさか、愛してますよ、と返される。その告白に一瞬、喜びそうになったが必死で耐える。(それじゃああまりにも軽いじゃないか!)
じど、っとジェイドを睨むように見つめていると、目が合う。瞬間、にこっと笑われたから思わずきょとんとしていると、手を差し伸べられた。
「さあ、行きますよ」
「?、どこへだ」
祭りは中止になったし、その原因である雨もまだ外でザアザア降っているはず。確認するために窓際まで歩いてカーテンを開き、外を確認すると、思った通り雨は降り続けていた。
振り向こうとして、けれどふわりと後ろから抱き締められる。顔だけジェイドを伺うようにむかせると、さっきとは一転して楽しそうなジェイドの声がゆっくりと耳に入っていく。
「せっかく雨になったんです。二人でどこか出かけませんか」
買いたいものがあるんです、と告げられて、それに答えようと口を開く。とキスをされる。
ちゅっ、と軽く離れたその唇に頭が真っ白になって。けれどもすぐさま熱くなる。いつまでたってもキスになれない。(多分今の自分は真っ赤に火照ってるはず)(なんか悔しい)そんな様子がおかしかったのだろう、くすっ、と笑われて(笑うなよ、恥ずかしい)耳元で囁かれる。
「私は、あなたと過ごせるから雨が降ってくれて嬉しいです」
あなたはどうですかと聞かれて、ああこれは負けたなと思った。そんなこと言われたら、雨が降ってよかったって思ってしまうじゃないか。
あまりにも嬉しそうに笑うから、なんだかこちらも嬉しくなって、向き合うとまたキスをした。
「そんじゃ、買い物に行きますか」
「ありがとうございます、ガイ」
すっと、手を繋がれて、ああ、雨も悪くないなと思った。



雨降りと君事情
(キミが笑えば僕も晴れ)

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