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□答えが出るまで問い続けた
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この寒空の下、白い大地とは対照的なこの髪は存在を強く主張するように映えているけれど。
世界の下、読まれた未来に、この大地にさえどこを探してもきっと。


( どこにも俺は存在しないんだ )

掌に刻まれたしわはどこまで自分のものなんだろうか。




考えてみれば簡単なことで俺には「代わり」の名前しかない。俺は「ルーク」であって「聖なる焔の光」ではない。それはもともとオリジナルのものであって、オリジナルの「代わり」であるレプリカの俺のものではないのだ。
本当に簡単なことだと思わず出たため息は寒さのためか白い。



ケテルブルクのこの寒さはやはり預言に読まれていたのだろうか、たとえ預言から外れかけたこの世界であっても。たった1℃の温度差でさえも、曇り空も、雪の降り止まないこの時さえも。そうだと信じる人間はこの世界に何千何万人以上いるのだろう。それがとても悲しいことだとは思うけれども。
(預言に俺の存在があればもしかしたら、なんて馬鹿なこと)
預言にさえ存在しない自分はみんなにとって希望であるでほかに、世界にとってはそれさえもを破壊するただの捨て駒に過ぎなくて。自分が存在したことを否定したくはないけれど、けれども自分が存在したからこそ変わった世界は確かにそこにあって。それをみんなは希望と言うけれど。

(けれどもそうとは限らないだろ)



いつのまにか。簡単にたくさんのレプリカがつくられて、たくさんのレプリカが蔑まれて、それでもここにいる俺は仲間に守られて。
なあおかしくないか、なんて誰にも聞けない、聞きたくない、聞く勇気もない。
そこにいるレプリカだって俺と同じであって、生まれてこなければよかった恵まれてない命であって、そこにいるだけで邪魔な扱いをされる、悪く言えばオリジナルの代わりにさえならない存在で。俺だけが特別なわけないはずなのに、それなのに周りからは存在が認められて。俺を自分の子供だという父親もいて。

違うだろ、なぁ。本当は俺に父親なんていなくって、もちろん母親も、当り前に生きていい世界さえもなくて。俺を必要だといってくれる世界だって本当はオリジナルのものであって。
本当は、そこにいるレプリカと同じように消えろといわれるのが
(なぁ、あたりまえなんだろ)

レプリカ達には預言がない、名前さえもない。
そして俺にも

人間として歩む道はどこにも記されてはいない。

(それが怖いだなんて言ったって、きっと誰にも解らない)



このまま世界は預言から外れていく。それを怖いと嘆く人間も、俺を憎む人間もたくさんいるのだろう。
もしかしたらそれがいいのだと言ってくれる人間だって或いは出てくるのかもしれない。

(けれどそれが俺の生きていい理由になるとはどう考えたって思えないんだよ)

どれだけ頑張っても、それこそ命をかけたとしても。
名前のない俺は人間ではないのだと思い知らされて、それこそレプリカである俺には人間を名乗る資格なんてなくて。どうすれば人間になれるのかなんて途方のない考えが頭を占める。

いいことをすれば、悪いことをしなければ、強くあれば、全てを背負えば人間になれるのか。
そんな考えに答えなんてあるはずもなく。だけどひたすらに願うのはただ。



(誰か俺に人間としての生をください)






名前に縛られる俺を愚かだといつか君は笑うだろうか

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