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□指先
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ぱりん
「やっべぇ」
とりあえずボール取りに行きます、とその場を離れた。
「・・・何これ」
応接室に戻ればなぜか割れている窓ガラス。それと犯人を知らせる決定的な物。
「しつれーします」
「君でしょ、これ」
入ってきた山本を睨み付けながら雲雀は転がっているボールを指差した。
「はは、ごめん」
「笑い事じゃないんだけど」
ばらばらに散らばったガラスの破片は机の上に置いていた書類にも散っていて、雲雀は更に不機嫌になる。
「わりっ、すぐに片付けるからさ」
「当たり前でしょ」
廊下にある掃除用具入れから箒を取り出してきた山本を雲雀は睨み付けて書類に向かった。
「―――っ」
机の上のガラスを退かそうとしてしくじった。痛みを感じてその後には赤い水滴がぽた、と書類の上に落ちてしまう。
白色の紙の上に赤色の水玉。急いで拭うも酷くなるばかりでもう遅い。
「・・・最悪」
「どうしたんだ、ひばり」
一旦手を止めて振り返った山本は吹き残された赤を見て気づいた。
「消毒しねぇと・・」
「いいからはやく片付けてよ」
しっしっと怪我した方の手で山本を払っていた、ら雲雀のその手を山本は素早くつかんだ。
「ちょっと・・」
「いいからかせって」
まじまじとその指の怪我を見て、そして。
ぱく
「〜、いいかげんにして!!」
指を口に含んだ山本にきれて雲雀は山本を突き飛ばして距離をとる。
「まだ消毒できてないって」
「自分で出来る!!」
掃除しろ!と雲雀は逃げるように部屋を去った。
一人残された山本はしばらく呆然としていたが、すぐにまた箒を動かした。
「やべ、かわいい」
真っ赤な顔をして怒った雲雀に、どうしようもなくときめいた山本少年なのでした。