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□笑顔が欲しくて
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「ヒバリ!ハイチーズ」
ばこっ
思いっきり地面にたたき付けられた。殴られた頭部は半端ではないほど痛む。
「ふざけた真似はしないでくれる」
げしっ、と横腹を蹴られて少しだけ息が詰まった。容赦ないのは何時ものことだが少しぐらい加減してくれたらと思う。多分雲雀にとっては十分手加減してくれているのだろうが。
体のいたるところを擦りながら起き上がって、もう一度カメラを構えてみる。インスタントのカメラはすぐに雲雀を捉えた。
そしてシャッターを押そうとした瞬間、目の前をすばやく何かが通り破片が頬を掠めてワンテンポ遅れて血が流れた。恐る恐る手の中をみるとカメラは原形を保つことなく見事に破壊されていた。
「聞いてなかった?ふざけた真似はやめろ」
いやいやこれはあんまりではなかろうか。もちろん山本はそんなこと口にはしなかった。今言えば確実に殺される。
カメラの二の舞になるのだけは遠慮したかった。
「ヒバリはカメラとか嫌いなのか」
「必要以外に撮りたいとは思わないね」
ソファーに遠慮なしに座ると雲雀は山本を少し見て、また手元に視線を戻した。
手元には不良生徒達の顔が載った書類があって、少し同情した。もちろん雲雀にではなく不良生徒にだ。
書類をまじまじと見ている雲雀をみて、今ならばれないのではないかとズボンの後ろポケットに手を入れようとして、やめた。
撮りたかったものはこれじゃない。
(笑顔が撮りたいっていったら、やっぱ怒られそうなのな)
後日、見事携帯で笑顔を撮るのに成功したが、またも粉砕されたのは言うまでもない話。