TEXT01

□我が儘な欲しがり屋
1ページ/1ページ

本当に好きだから触れるだけでもよかった
なんてそんなことも無いんだけど
出来るなら全部欲しいけど
でも そんな贅沢言ってられない時もある





「ひばりー」

呼びかけても振り返らない。声は明らかに聞こえてるはずなのに。
無視されているのは嫌でもわかってしまう。

「待てって、おい」

急いで追いかけて追いついて、肩を掴もうとするとすばやく離される距離。
これを心の距離とでも言うのだろうか。
よくわからなかったけど、目的を達成できなかった掌は冷たく感じた。

「なぁ、ひばり、俺」
「黙って、君の戯言に付き合う暇は無いよ」

きっ、と睨まれて少しだけ呼吸が止まる。
それは怖いとか迫力があるとかそういうのに似てるけど違う理由で。
ただ単にその瞳に俺を移してもらった事がすごく吃驚して嬉しかった。

「頼む、聞いてくれって」
「君しつこい、僕忙しいんだけど」

どんなに邪険に扱われたってめげてられない。
これは絶対譲る事のできない決心だった。

「ひばり!」
「うるさ・・・―」



「好きだ!!」

殴られる寸前、振り上げられた手をとって。
伝えた言葉はどこまで届いたのだろうか。



「遊びでも暇つぶしでもいいから、俺のものになって」

上手く笑えただろうか。

本当は全て欲しいけど、それでもそんな高望みできる相手じゃないから。
だから、こうして格好悪い告白しか出来ないけど、少しでも雲雀が俺のものになるのを望んでた。
きっとすぐに全部欲しがってしまうってわかってたのに。

掴んでいた手を離すと、すぐさまにその手はまた振り上げられた。
ああ、それが返事ならもうこのまま殴られてしまおう。





「僕はそんな器用じゃない」

頬の近くで止められたと同時に雲雀がそう呟いた。
かすかに震えているトンファーに違和感を感じて顔を上げた。それしか出来なかった。

「恋なんてすれば誰もが我侭になるんだ」
「そんなの百も承知だよ、それなのに」
「遊びでもいい?ふざけないでよ」



「君はどこまでも勝手だ」

静かにそう告げた雲雀の目は潤んでいないものの泣いてる様に見えて。
あまりにも衝撃的な中、ただひとつぼやけた頭でわかったのは。彼の望んでいたものを俺が壊してしまったのだ。


「ごめんひばり、ひばり、ごめん」
「うるさい」
「ひばり」
「うるさい」
「ひばり」
「うるさいっ!」

「 ひばり
俺と本気で付き合って 」

「・・・最初からそういいなよ」

すぐにそらされてしまったけど、微かにみえたその顔が、怒ってはいなかったから。
ゆるく抱きしめて、耳元で彼の答えを待った。























す。


だからあなたの我侭を俺にください。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ