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□PM:PARTY
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小さなパーティでも開こうじゃないか



PM:PARTY



「ケーキが食えるなら祝われるの嬉しいよな」

昨日、見事な夕焼けをバッグに優雅な帰り道。
そう言ったのは恋人の先輩。赤い髪は夕焼けに隠されてしまいそうなぐらい同化していた。
グリーンのガムを膨らませて幸せそうに笑うあんたはなんにもしらない。

とりあえず、先輩の幸せって結構安いッスよね、といって殴られたとでも言っておこうか。
(ケーキひとつで幸せになれるなんて可愛いとは口には出さなかった)







「パーティでも開いてみるかのう」


そういったのは仁王先輩だった。先週の土曜日の部活、丸井先輩が家庭の用事かなんかで丁度いなかったときだった。

「いいね、いい暇つぶしになりそうだ」
「ひ、暇つぶしとは何だ、たるんどる!我々は全国さんれ」
「真田、うるさい」

部長はその案にすぐさま乗ってきて、反対していた副部長は怒られてただ黙ってるしか出来なかった。
(けっこう立場無いッスよね、副部長)
周りの先輩たちもその話を受け入れてどんどん話は進んでいき、何やら近日中に行おうということになった。

「何時にしますかね」

そんな柳生先輩の一言に皆それぞれ予定を考え始めていたから。
だから思わずだったんだけど。

「丸井先輩の誕生日パーティなんてどうッスか!」

なーんて口走ってしまい。(いや、俺はよく言ったんだと思う、うん)
駄目かもしれない、とか思ってたのだけれども。

「いいじゃないか、赤也」
「丸井が喜びそうだな」

なんてオーケーされたり褒められたり。

そういうことで丸井先輩には内緒でパーティの準備を進めることになったのである。








「赤也、はよー。何か言う事は」
「たんじょーびおめでとうございまーッス」

眠たい時の目では大好きな先輩さえもが歪んで見える。
仕方ないんだ、これでも先輩の声を聞けて回復した方なんだ。

「仁王、はよ」
「おお丸井、おめでとさん」
「馬鹿にしてんだろ」

後ろから仁王先輩もやってきて丸井先輩の頭を撫でながら祝福の言葉をかけていた。
それが少しむかついてあれだけ眠かった目なんてすぐさま覚めてしまった。
思わず止めようと地面を蹴って間に入ろうとしたその瞬間、頭を掴まれた。
吃驚したのも束の間、耳元で仁王先輩が囁いた。



『わかっとるんか、今日放課後じゃけぇな』
「・・・うぃーす」

そんじゃ後で、と去って行った仁王先輩に何か気付いたのか丸井先輩は不思議そうな目で見つめていたが、特に関心がなかったのだろう。

その後何時も通り丸井先輩の教室まで一緒にいって、そこから俺は自分の教室に戻り放課後を待つ事にしたのである。

(待つといっても寝てるんだけど。決して氷帝のあの人程じゃない、はず)







気付けばもう放課後で。

「あかやー、部活行くぞ!」

何時もと同じく、教室の入り口では丸井先輩が立っていて。
クラスの女子とかが「誕生日おめでとうございます」なんて叫んでいた。
(女子の甲高いキンキン声は正直寝起きの耳には相当きつい)
はやくこの場を逃げ出したくって、先輩の手を掴んで、教室から早々に立ち去ったのである。



「すげぇな、学年違うのに知ってるもんだな」
「それだけ先輩人気なんじゃないんスか」
「まーな、なんたって天才的だし」
「かーわいいの間違いっしょ」

そういったら膨れた先輩がものすごく可愛かった。



そんなことをしてるうちに、部室の前まで着ちゃったわけで。
先輩は何にも知らないわけだから、躊躇いもなんもなくドアノブに手をかけようとしてたので。
急いで止める。

「なんだよ、赤也」
「ちょっと待った、ねぇ先輩」

怪訝そうな顔でこちらを伺う丸井先輩の唇を奪って、続ける。




「ようこそ、どうぞお入りください!」

普通ドアを開けるのは彼氏の役目でしょ。ということでドアノブを急いで握る。
先輩は俺の意味不明な行動だけでも吃驚したみたいだけど、もっと吃驚しちゃってください。

ドアを開けたらあんたが主役だから。





『happy Birthday!』

さて、パーティはお気に召しましたか、なんてね。

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