星の降る刻

□ウタカタノトキ
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「なっ…命を削るってどういうことだよ!」
反射的に立ち上がった俺の肩に手を置き座らせようとしながら
「それをこれから話そう」
といった。
俺はアーサーの手を払い椅子に座ると話を聞いた。
ヒールの紋章の力と代価、兄さん自身分かっていて使っていたこと。今回の戦いで傷ついた人を、まわりがとめるのも聞かず治し続けていた事。そして一度に使い過ぎた力に体が耐えられなくなり倒れた事も…

―ガシャンッ―
「こうなる事を知ってて兄さんに力を使わせ続けていたのか!」
俺は目の前にあったカップをアーサーに投げ付けながら叫んだ。
「すまない…」
アーサーはそれだけで何も言わなかった。
「シリル」
更にくってかかろうと口を開きかけると、後ろから静かな、強い声に呼び止められた。
振返れば、まだ青い顔をした兄さんが壁にもたれながら立っていた。
「兄さん、まだ起きちゃダメだ」
駆け寄る俺に兄さんが続けて言う。
「力を使ったのは僕の意思だよ。命令されたからとかじゃない。目の前に傷ついた人がいて、自分に助けられる力があるなら助けたいんだ」
そういう兄さんの口調はキッパリとしていて反論を許さないという感じだった。
だからといってここで引き下がるわけにもいかない
「それで兄さんに万一のことがあったらどうするんだよ!」
そう返すと俺の両肩に手を置きしっかりと目線を合わせて諭すように言う。

「…それでも助けたいんだ」
そういった兄さんの目の迷いはなく、俺はどうしていいか解らず家を飛び出していた。

そして昔よく兄さんと行った丘の上までくるとゴロンと仰向けになる。




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