マイソロ3
□取ったもの
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「アハハ…最後まで、わかり合えなかったでしょ?僕達……」
ぐったりと彼は横たわる。私は必死にレイズデッドの詠唱をしていた。
ヴェイグさん達の回復は終えた。…後は、
「レイズデッド!」
光が舞い降りて、傷を癒す。
マオさんが正気か、と言いたげな顔で私を見ていたけど、私は新たな詠唱を続けた。
…目の前でヒトが死ぬ所は、一回たりとも見たくなかった。
「…何で、僕なんかを助けるんだい、サラ……?」
詠唱中は喋れない。
喋ってはいるが、会話はできない。
「リザレクション!」
ヴェイグさん達を癒すとともに、彼も癒した。
けどまだ彼の出血は治まっていなかった。
「サレさん」
そっ、と彼の隣に座り、また詠唱を始めた。
「いいの…かい、僕なんかの傷を癒して……。僕を、癒したら…、僕はまた、キミを殺す為に、剣を取る…、よ」
「キュア」
まだ傷はふさがらない。私は彼の問いかけに答える事にした。
「貴方を助けようとする私の心を、嫌だとは思わないんですね…」
「…ハハ、僕らしくないね…。もうヘドも出ないや。僕を助けた後は…、僕をどうする気だい?」
「そうですね…。秘密です。ホラ、口開けて下さい。グミですから!」
そう言って彼の口に無理矢理彼のラズベリーグミを押し込んだ。
「僕のグミかい?………大分傷も癒えたね。さあ、死んでもらおうか、サラ」
そう言う彼の手には刀など握られておらず。
「ねぇサラ!そんなヤツ置いて、もう行こうよ!」
「サラさん…」
「サラの好きな様にすればいい。行くぞ」
行ってしまうヴェイグさん達。でもやっぱり私はサレさんが放って置けなくて、
「キミも相当なお人好しだね。僕を助ける?正気かい?」
「正気の筈、ですよ。ハイ、コレ」
私は彼に刀を返した。
「…キミ、本当に正気なのかい?敵に武器をわざわざ返すなんて。…グッ、」
「ホラ、怪我で動けないじゃないですか」
起き上がれないサレさんに私はまたキュアを唱える。
彼が立ち上がった。
「バカだねぇ、キミは。その職業じゃ、一人で戦えないのに」
ディセンダーだから何とかなる、なんて甘いことを考えて、杖を強く握る。
世界樹に私は帰るのかな?ゴメンね、カノンノ。
「…ホラ、行くよ。キミを殺すのが惜しくなった。サラ、キミのギルドに案内してよ」
かけられたのは優しい声で。きっと彼の“気まぐれ”なんだろうけど。
「ちょっと遠いんで、守って頂けますか?」
「キミはそんなこともわからないのかい?案内人が居なくなったら困るだろ。それに言ったろ?キミを殺すのは惜しい、って」
スッ、と私を庇う様に前に出たサレさんに、私は思わず聞いた。
「…あの、案内役なら私が前ですよね?私が前に…」
「煩いな。キミが前に出たらきっとキミ倒れちゃって案内できないでしょ?いいから後ろから教えろよ」
すたすたと彼は行く。
私も置いて行かれない様に走った。
アンジュさん達にどう説明しましょう…?
―――
サレを殺したくなかった、それだけ。
11.07.01