マイソロ3

□食事当番は危ない
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「チェスターさん」

「お、サラか。どうした?」

「チェスターさんとアーチェさんの様子見に来ました!」

「おまっ、何だよそれ…」



エヘヘー、と笑うコイツの気が知れねぇ。



「アーチェさん、今日食事当番でしたよね?一緒に行かなくて良いんですか?」

「は!?あ、うわっ、そうだったな!クソ、そりゃやべぇぞ!」



サラを置いて走り出したオレはふと気づく。



「今日の食事当番って…サラもじゃねぇか?」



急いで戻ってサラの腕を掴んで再び走り出す。



「キャー、チェスターさんちょっと何ですかー!?」

「お前だけサボろうとか無駄だぞ!?今日はお前も食事当番だろーが!」

「…あ、忘れてた」



走るまでもない距離の食堂に着くと、アーチェが早速料理を作ろうとしていた。



「アーチェちょっと待った!今日はオレとサラも手伝う!」

「あ、サラやっと来たー。あたし一人に任せるなんて酷いじゃないのー、ブー」

「ごめんなさいアーチェさん。私すっかり忘れてて」




女の子同士で朗らかな可愛らしい花とか飛んでそうな雰囲気を作り出してるとこ悪いが…。



「とりあえず料理しないか…?」

「あらそうだった。忘れるとこだった〜」

「忘れんなよ!」



にまにまと笑うサラがうざったらしい。お前ホントに救世主か?ディセンダーなのか?



「とりあえずシチューでも作るか…」

「えー?それ前作ったー」

「まあまあ、おさらいと思って」

「ブー、まあいいけどさあ…」



アーチェの料理をオレは殺人兵器だと思っている。
サラも居るし……
そういやサラって料理出来んのか?



「サラ、お前料理…」

「初めてです」



……やっぱりか。やっぱりなのか。嫌な予感的中か…!
的に当たるのは弓矢だけで十分だ!



「アレ?何か上手く切れません…」

「バカ!にんじんを普通にハサミで切る奴があるか!」

「チェスター、早く野菜切ってよー」

「ちょっと待っとけ!」



何で料理出来ない奴しか周りに居ないんだよコノヤロー!



「なぁサラ、いつもお前は誰に料理を任してるんだ?」

「レイヴンさんです」

「………」



あのおっさんか…!



「な、サラ。おっさんが居ない時は?」

「うーん…。ミントさんですね…」

「ミントか…」



どうしたもんか…。
考えるが答えは出ない。出ないどころかアーチェがまだかまだかと野菜を待っている。
いや、鍋をアーチェに任せたら危険じゃないか?



「サラ、誰でもいいからまともに料理出来る奴呼んで来い。アーチェ、場所変われ」

「じゃあ呼んで来ます!」

「ああ、まともな奴頼むぞ!」



鍋から離れろと言ったらアーチェがええー?何でよー?と文句を言っていたが、いいから、と押しきった。



「ミントさん連れて来ましたー」

「あの、お料理ですよね。任せて下さい」



結局近いミントにしたらしい。これで少し安全か…。



「アーチェさんダメです!それは何ですか!?」

「コレ?コレはね、魔法のスパイスよ」

「美味しくなる魔法の?」

「そうそう。サラよく分かってる〜」



あ、ミントだけじゃ足りねぇ。



「サラ、ユーリも呼んで来い」

「分かりました!行って来ます!」



何で食事当番ごときにこんなに人数が必要なんだよ…。
その言葉は胸にしまっておいた。




「ユーリさん呼んで来ましたー!」

「よくやったサラ」



これで安全だろ…。
まだマシな料理が出来ると信じて俺は鍋を見つめた。
そう、あの日オレは誓った。カイルの死は無駄にしないと!



「だからな、とりあえずまずは野菜を切るんだよ」

「あたし味付けしたいー」

「サラさん、その包丁を持って下さい。ゆっくりネコの手にして、切りましょう」

「ハイ!」



未だ具が入らない鍋をオレは遠い目で見つめた。ああ、いつシチューは出来上がるんだか。
もう何でもいいからまともな料理が出来上がってくれればいいんだ。
病人が出なけりゃそれでいい。




「切れました!」

「長かったな…。よし、入れるぞ」


予め下準備はしておいたがまさかここまでかかるとは…。



「味付けしたいー」

「ダメだ。とにかく煮込むだけで良んだよ」

「漸く出来上がりそうですね…。ハァ…」



ミントの様に俺もため息が吐きたい。もうコイツ等には食事当番を回さねぇのが懸命なんじゃねぇのか?





「今日はあたしが作りましたー!」

「私も手伝いましたよ?」



「疲れましたね…」

「悪かったな、ミント」

「おっさんに押し付ければ良かったかもな…」



三人同時にハァー…とため息を吐いた。
ああ、苦労人だな、オレ達…。



「およ?今日サラちゃん達だったの?」

「ハイ!レイヴンさんに美味しいって言って頂けると嬉しいです!」

「んじゃ、いただきます」




今日は病人は出なかった、が。



「おっさんに殺意がわいた」

「奇遇だなユーリ、オレもだ」

「お二人共ケンカはやめて下さい!」



違う理由で病人が出そうだな…。





―――

どうしてレイヴン落ちになるんだ




11.05.31
 

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