青空

□さぁ、始まりだ。
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「オイ、紫藤。オメーいい加減にしろよ。」


「何が、ですか?」



私は今、屋上にいる。
クラスメートに呼び出されて。




「アタシの好きな男子に手ぇ出してんじゃねえよ!」



ドンッ、と突き飛ばされた。
私はバランスを失い、後ろに倒れる。

そこまでは相手も計算済みだったのだろう。

私も予想していなかった事が起こった。


私はあろうことか柵を越え、落ちたのだ、屋上から。




「は?」

「マジかよっ?」

「あ、アタシ知らないかんなっ!」





気がつくと目の前には青の世界が広がっていた。
そこにフワフワと浮き出る様にサングラスを掛けた少年が目の前で浮いて居た。
何故か私は彼に敬語を使わなければいけない気がした。



「貴方は、死神ですか…?」


「ん?オレ?オレは死神なんかじゃ無いぜ。むしろ死神は黒神の方。」



彼は私を見て笑う。



「オレはMZD。神様なんだぜ。」


「神、様…?」


「そ。疑わしい?」



ククク、と面白そうに笑う神様にまだ私は聞きたい事がある。



「私、確か屋上から落ちたはずなんですけど、私死んだんですか?」


「いや?神様の気紛れってヤツ?オレ様が助けたんだから死んでねえぜ。」



ある意味、絶望した。



「死ねたら、良かったのに…。こんな私、要らないのに…!」
「馬鹿言ってんじゃねえよっ!」



青の世界の神様が叫ぶ。



「死ねたら良かった?お前は馬鹿か!死ぬ必要ねえからオレ様が助けたんだろ!?必要なんだよ!簡単に死ぬとか言うな!」



ハァ、ハァ、と神様は肩で息をする。




「アレは事故だったんだ。お前が死ぬ必要無かったんだぜ。」



優しく優しく神様が微笑む。

涙が出る。
溢れて、溢れて、止まらない。


自殺行為だなんて馬鹿らしくてしなかった。
でも心の何処かで思っていたんだ、死にたい、と。

誰も私を必要としてくれなかった。
誰も死ぬな、だなんて言ってくれなかった。




「MZD、様ぁ…!」


「ホラ泣くなよサラ。」



何でMZD様が私の名前を知ってるかだなんてどうでも良い。
神様だからなんだろう。

今は私の頭を撫でてくれているこの手に甘えていようと思う。




暫くして大分落ち着いてきた。



「お、大分落ち着いてきたな。そんじゃ、行くか。」



MZD様の言った意味が分からなくて首を傾げる。



「ドコへ?とでも言いたそうな顔してんな。安心しろ、サラの元居た世界なんかじゃねえから。それにサラの体はもうアソコにはねえしな。」


「MZD様、ソレってどういう意味ですか?」


「ああ、サラの向こうの体はもう壊れてんの。向こうでは死んだ事になってるから。…それと、MZD様って長くね?」


「そうですか?」




うーむ、と私は考え込む。
MZD様以外、かあ。



「じゃあ、神様。」


「何かソレ嫌だ。」



MZD様に却下された。
MZD様、MZD様…MZ、MZ、D、M、Z、D、様…M、様、M様?



「M様ってどうですか?」


「MZDのMに様をそのまま付けたのか…。それも面白いな!」



またM様はククク、と面白そうに笑う。



「あ、後行き先だがな、元の世界にサラの体はもう無いって言っただろ?だからな、ドコへ行くと思う?」


「ドコ、でしょう…?」



分からない。本当に分からない。



「答えはな…」



M様は私の手をギュッと握る。



「オレの世界だぁっ!」



M様は叫んだ途端に私の手をグイッと引っ張り、ビュウッと飛ぶ。



「ホラ、サラ、一気に着いたぜ。」



気がつくと私達はジャングルの上に居た。



「M様、ココは?」


「オレん家。ホラ、アソコに家が見えるだろ?」



スッとM様が指を指した方には確かに一軒の家。



「今日からアソコがサラん家だからな。」




嬉しい。
私の家でもあるんだ。

私の家だって言っても、良いんだ。


ねえ、ココでの、私の新しい家での生活は、楽しいかな?
ねぇ、幻影君。




続く。
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