colore・番外
□とあるボスの憂鬱
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その日、たまたま予定していた仕事が早く終わって予め告げてあった時間よりもかなり前に屋敷に着いた。
いきなり早く帰ったらあいつは驚くだろうか?
…なんて考えながら玄関のドアを開ける。
「………あれ?」
出迎えてくれるものだと思っていた姿はそこには無くて、肩透かしをくらった気分。
予定の帰宅時間でなくても車の音を聞き付ければ玄関に出迎えに来る亜紀の事だから、掃除か何かをしていて聞こえなかったのだろう。
彼女の『おかえりなさい』を聞きたくて捜しに行こうかとも思ったが、それよりも先に着替えようと自室に足を踏み入れた俺は視界に入ってきたそれに自覚できる程に硬直した。
「……ちょ…ま、……え……いや…ええ…っ!?」
こんなにパニクったのは何時振りだろうかというくらい、情けない程に動揺を隠せない。
俺をこんなにした原因、それは……
俺の自室の椅子に掛けてあった――――亜紀のメイド服だった。
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