short story
□アイシテル
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何時もどうりに事が進み過ぎたと言うか………。
神田は、ウトウトし始めた。
ほとほと、困る。
この男に振り回されて数時間、逃げ回りマラソン大会ですか〜?良いですねェ、などとファインダー達に温かい目で見られていた。
マラソン大会?そんな、甘っちょろいものなら、僕は苦労しないのに。
キラリと光るあの刃が何度僕の命を狙ったか……考えただけで、おぞましい。
神田とは、直ぐ口論になる、否したくなくてもあの人は僕をイライラさせる才能が有るのだ。
「嫌よ、嫌よも好きの内ってな。」
「ラ……ラビ?!」
がたんと、談話室の扉を開けて入って来た、赤毛の青年。
ラビは、『シー』と人差し指を唇に当てて、ゆっくりと近付いた。
「おー、おー。あのユウちゃんがくうくうと人前で寝てるさァ……。」
神田は、以外とあどけない顔で寝る、寝顔は少女の様で正直に可愛らしかった。
ラビは、「こんなに大人しくしてたらなァ」などとつぶやいた。
現在、大人しくさせる為に苦渋の決断(嘘)で、コムイさんの力を借り薬で眠って貰っている。
コムイさんに寄れば、明日には起きるだろう。
「アレンは、ユウが嫌いなのか?」
「いや、嫌いと言うか……、はっきり言ったら余り話した事が無いンですよ、直ぐ喧嘩になるし。」
話そうとするが直ぐに喧嘩だ。
「あー……、まァ、俺もユウの事は殆ど知らねェし……。」
ラビは、頬をぽりぽりと掻きながら苦笑した。
僕は、もう一度視線を神田に落とし、顔に掛かっている長い髪を除けた。
本当は君ともっと話しがしてみたいし、口論なんかしたくない。
欲を言えば、もっと君を知りたいし、仲良くしたい。
でも、君は人を拒絶する、どうして?なんで?なんて言えない、だって決めるのは本人の自由なんだ。
「んじゃァさ………、アレンはユウの事知りたい?」
僕は、一瞬頷こうと思ったが、ふるふると首を横に振って、彼に笑顔を向けた。
ラビは困った様に笑いじゃァ、邪魔したと出ていく。
「さて、僕も君を部屋に運んでしまおうかな。」
よっこらしょと彼をおぶり、談話室から出ていく。
幸い、神田の部屋は人気の少ない所に面していて、廊下を通る者は居なかった。
おぶられている彼を見て、何か言う人もいるだろうから。
それにしても、彼は軽い方だ。
何故だか、彼より背の低い僕が神田をおぶれるなんてと優越感にひったって居たその時。
「あーー……。」
背後から、聞き覚えのある声が頭上より降ってきた。
おいおい、嘘でしょコムイさん、きっちり点検して「睡眠薬」飲ませたンでしょうね。
たった、30分で切れるなんて、予想外ですよ。
ちらりと僕は、彼を見遣るとまだ寝ぼけ眼の様で、急げば寝ぼけてたと、言うことに出来ると彼の部屋へ急いだ。
もし、覚醒でもすれば躰真っ二つでは済まされない。
「さーて、僕はおいとましますよ。」
と、わざわざ言わないでも良いのに僕は、神田をベッドへ投げつける。
絶対に触らせてくれない六幻もベッドに立てかけて、あの六幻で僕は………。
ゾーと、背筋に何かが走った。
兎に角早く………!!
「ンァー……やし?」
ピタリと、僕は立ち止まる握られる腕、相当力が入ってる様で、そして「やし?」勿論僕の名前は、『やし』では無い、男らしいアレンと言う名前が有る。
あァ、終わったなと思った。