short story

□茜空とお前と俺
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 神田は、自分の運を呪った。
 目の前の箸の先端は赤に着色されており、三分の一の確率で、出されるのだ。
 勿論、他の箸には何の印も無くて、ソレを手にするのは勝者、二人は無音の爆笑に捕われていた。

「……テメェら、嵌めたな…?」

 その切れ長の目での睨みは絶大で相当な威力を発する。

「さぁ、なんの事?」

 首を傾げる彼女は実に楽しげで今に起こる事を今か今かと待ち望んでいるかの様だった。

「はい、行って来るさぁ。」
「チッ!」

 ガタンと席を立つと窓際で読者に更ける見た目根暗の大きなくろぶち眼鏡の『彼女』の元へ向かって行った。



 神田ユウは、それなりに知られた人間だった。
 父親は、貿易会社の社長で、祖父は警視総監。
 彼はソコの息子。容姿端麗、成績は……まぁ人並み位だが、将来が決められた御曹司だった。

 まぁ、この学校は金持ちの集まりだ、神田が一人が金持ちと言うわけでも無かったから特別目立つ訳でも無かった。
 そんな彼が何故根暗な『彼女』に用が有るかと言うのは、リナリーが最近転校してきた『彼女』と話がしてみたいと、言ったからだ。
 それから何故か告白×ゲームになり…、それを受けるはめになったのが、彼なのだ。

 神田は『彼女』の前に立つとストレートに答えた。

「俺の女になれ。」

 どうせ、断るだろうと思っていた話した事も無い男に急に『俺の女になれ』と言われても、引くか、うろたえるかだろう。
 その言葉に、くろぶち眼鏡の『彼女』は頭を上げた。
 神田は、息を飲んだ。
 左目に包帯で巻かれた痛々しい傷、よく『彼女』を見ていなかったからなのか、その包帯には血が滲んでいた。

 桃色の唇が開いたと思えば、

「良いよ……。」

「はっ?」

「良いよって言っているンです。」

 『彼女』その眼鏡をとると、大きな銀灰が顔を覗かせる。
 17には見えない、幼い顔立ち。
 『彼女』はペンとメモ帳を取り出しサラサラ何かを書いた。




 
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