霧の先にある希望の虹


□最後の瞬間まで…
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最近頻繁に卯月たちの回りの人たちがリアや深雪を忘れる者たちが増えてきた。

特捜隊ではそんなことはおきない。
それも区々で、一瞬だったり、一日だったり、しかも忘れていたのすら忘れている始末だ。
それを二人に聞いても次元の歪みの関係だとか言われて誤魔化される。

三月になり卯月たちの学校は卒業式の練習が本格的になった。


そんなある日、深雪は小西酒店に赴いていた。
「料理酒と、地酒ください。それからいつもの林檎酒」
「はい、いつもありがとうございます」
「珍しいですね、地酒を頼むのは」
「来月頃には国に帰ることになってるんです」
「そうなんですか…寂しくなりますね…
せっかくのお得意様がまた減るのか…」
「国には私の大事な家族や仲間たちがいますから、娘たちも心配ですし」
お金を渡して言った。
「あらあら、お娘さんが…おいくつになるんですか?」
「誕生日がくれば11歳、したに4つ下の息子もいます。
ませガキですけど」
受け取ったおつりを財布にしまった。

「前も、母の日に自分で稼いだお金でプレゼントをくれましたよ。
本当は温泉旅行をあげたかったっていってね」
「え?」
強い風がふいた。
思わず目をつぶった。
風がおさまり、目を開けたらそこには誰もいなかった。

「あれ‥‥今、誰と…?」

『自分で稼いだお金で温泉旅行をプレゼントしたかった』

その言葉だけが頭に残っていた。

店主はまさかと思い、主人をなくした小西早紀の部屋に向かった。


「願いは叶えたわよ…。対価は―――」
深雪は呟くように言った。



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