霧の先にある希望の虹


□湯気と再会
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「温泉、久しぶりだな」
「そうだね」
りせは直斗にじゃれついている。すっかり仲良しになったようだ。

「にしても‥‥」
「ん?どうした?」
「何でも‥‥」
「なるほどな」
深雪は何となく察しがついた。
「でも、深雪さんって菜々子ちゃんと知り合いだったんですね」
「色々あったからな」
「そうだ。おねーちゃん、デールくん元気?」
「ああ、元気だ。他の奴もな」
「ん?」
湯槽に浮かべた桶に手をかけた。
「ノーミソどもめ…
従妹が使う悪口をつかっていった。
「リアさん、どうしたの?」
「おーい、お前ら。今来たら、リーに蜂の巣にされるぞ」
深雪は仏心で言った。
リアはすでに安全装置を外している。←
がたがたとあわただしい音が響いた。
「桶があると思ったら、リアさん、銃を持ち込んでたんですね」
「よくわかったね」
菜々子は銃を水鉄砲だとおもってくれた。

「そういえば、『湯気』は深雪の眷属だったよね」
「ああ、『熱』だからな。そうだ、久しぶりにあれをやろう」
「あれ、って何ですか?」
「後でやってやる。雪子、夜中くらいにここ借りられるか?貸し切りで」


◇◇◇


十時頃に一時的に浴場を貸し切りにしてもらった。
足湯のように足だけを湯槽につけている。
「ミユチャン、あれって何クマ?チッスクマか」
「燃やされたいのね」
深雪は軽く脅した。

「魔法だよ。深雪は炎を使った幻惑が得意なんだ」
「炎使いって言ってたッスからね」
「湯気も私の眷属だから幻を見せられる」
雲が切れて月明かりが浴場を淡く照らした。
「じゃあ始めるか」
湯気が多くなってきた。辺りを包んで言った。
「幻って何を見せてくれるんですか?」

「自分が強く『一番あいたい』と思ってる人よ。心から『あいたい』と願ってる人」
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