レジェンド・ウィング 完


□閑話 虎穴に入らずは虎の子得ず
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「この先に行くのは初めてだな」
今まで何度か入った事はあるが、最奥にまで行った事はない。
このあたりの野生ポケモンはレベルが高い上最終進化のポケモンばかりだ。そうでないと生き残れないのだろう。
「分かれ道‥‥どっちからだ‥‥」
油断してる(と思ったがそうではない)深雪に野生のゴローニャが襲いかかってきた。

バシャン、バシャンドスンッ

ククが指示無しで“めざめるパワー”を使った。
「真っ直ぐか‥‥

いくぞと、何事もなかったように足を進めて次の部屋に入ったら、一瞬浮遊間に襲われ直ぐに重力に従い落下した。

「深雪っぐぁっ」

今度は油断した。
さっきのゴローニャの子供か、子分かは分からないが、イシツブテがたいあたりしてきて足場が崩れて深雪に続くように落下した。



「ぷはぁ、下が粉雪で助かった…」
柔らかい粉雪の山に落ちたため無傷ですんだ。
「クク、大丈夫か?」
「ああっくそ」
軽傷だが雑魚にやられて悪態をついた。

『―きたか、炎の娘よ』

「お前か、私を呼んだのは‥」
髪に残った雪を振り払って、ここまで導いた相手に言った。
毛を逆立てるククをさりげなく制した。
『―驚かないな、炎の娘』
「歌海とかも使えるからね、それから私は“深雪”だ‥‥隠名だがな」
『―真名は?』
「‥朱音だ。お前は、どんな“ポケモン”だ?」

ポケモンにしたらかなりの小型になる。
そう、小さいのだ。甲羅の一部の一つが模様のように違う色をした“亀型”ポケモンだ。

「深雪」
「クク、大丈夫だから」
ここに導いたポケモンを良く思っていないようだが、深雪は優しくたしなめた。
『―あいつらが気に入ったのが良くわかった』
「あいつら?」
『―“情-こころ-”の神達だ』
深雪はてっきりファイヤーかホウオウかと思ったら、『面識がない』ポケモンだった。
「それで、何で私を呼んだのは?」
『―会ってみたかった。
真に人と、ポケモンと向き合う類い稀なる娘に――
季結の子孫にして生まれ変わりであるおまえに』
「確かに、私は“初代”様の再来とも言われてるが――私は『私』他の誰でもないし、なるつもりもない!」
それだけなら帰ると言った。
『―“飛行”ポケモン持ってないんじゃないですか?』
「‥‥お前、“エスパータイプ”か」
飛行タイプがあったフレイムは死火山に帰ったため手持ちに飛行できるポケモンがいない。
でも、いくらポケモンでもそれがわからないはずだ。
解るのは、エスパータイプのポケモンくらいだ。
「――あなた、『神』クラスのポケモンか」
ラプラス等種族数が希少なポケモンがいるが、それより少なく尚且強大な力をもつポケモンを人は“伝説”といい、そしてその上をゆくポケモンを“神”とよぶ。

「それに、三心に近いな」
意思、記憶、感情のそれぞれを司る“三位一体”の兄弟と伝えられている。

『―トレーナーに必要な観察力や洞察力があるな』
「皮肉か?」
『―好きにとらえろ』
「とにかく、私になんの用なんだ。さっさと言え」
バクフーンが今にも火を吹きそうなため本題を要求した。
『―‥‥‥深雪、あなたはこの島に歴史が“あやふや”なのに疑問を持ったことはないか?』

「それは、アルセウスが地方丸ごと一つと一緒に『隠蔽』していたからだろう」
事実を知っているゆえ、はっきりという。
『―そうですね。私は<シントル>“この島”の伝説のポケモンです。そして他にも四匹います』
「そいつらに会えってなら断る」
伝説のポケモンならトレーナーが憧れ喉から手が出るくらい欲しがるものだが、深雪には興味がないものだ。
「だいたい、歴史云々-うんぬん-なら美繰に言いなさいよ」
どちらかといえば、このあたりは国境に当たるが、虹というより紅といった方が正しい。



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