短編小説
□雪うさぎ
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「よし、こんなものかな」
キラが手にしていたのは、まるでパソコンのマウスのように形付けられた雪の塊だった。
「後は…」
きょろきょろと何かを探している。
「あ、あれだ。ちょっと待っててね」
先ほどと同じことを言うと、またどこかに行ってしまった。
自分はどうしたらよいのだろうか。
付いていくべきかこのままここで待っているべきか…。
そんなことを考えているうちにキラが戻ってきてしまった。
彼の手のひらには赤い、小さな木の実が二つ乗っている。
それを先ほど作った雪の塊につけると――。
「うさぎですわ!」
ラクスは両手を胸の前でパンッとあわせると嬉しそうに言う。
「まだこの量だと雪だるまは無理だけど…雪うさぎならできるかなって思って」
キラは出来てたての雪うさぎをラクスの手に渡す。
「…可愛らしい」
ふっと優しく微笑む彼女にドキリとした。
ラクスは…ふとしたときに大人の女性を思わせる顔つきをすることがあった。
キラはそれを目の当たりにすると、いつも俯いてしまう。
見てはいけないものを、侵してはいけない領域に足を踏み入れてしまった感じがするのだ。