短い世界

□†‡本日、鏡音日和。‡†
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「はぁぁ…」


「いいかげんリンに謝ったら?今ならまだ許してもらえるかもよー?」


目線の先にいるのは、不機嫌な顔で黙り込んでいるリン。


「謝るのは………嫌だ。」


あきれたように長ーい溜息をつくミクをソファーに座ったまま見上げ、


「………嫌だ。」


もう一度言った。

そもそも、簡単に謝ることができるのなら昨日のうちに謝っている。
昨日のケンカは……明らかに俺が悪かったのだから。


「でも珍しいわねー、レンが原因のケンカなんて。」


この言い方は間違っている。

ケンカの原因はリンと俺どちらもだ。
もっとも、悪いのが俺だけなのは変わらないのだが。


「はぁぁぁぁ………」


訂正する気も起きなくて、もう何度目か分からない溜息をついた。










事の起こりは昨日の朝。


いつもより一時間ほど早い時間に目が覚めた俺は、どうせまだ誰も起きていないだろうと思いつつ居間に向かっていた。

この1ヶ月、マスターは仕事で海外に行っている。
1ヶ月はさすがに長いだろうとパソコンの電源を入れっぱなしで出発してくれたので、俺達は
普通の人間のようにパソコンの外で生活していた。

俺達ボーカロイドはパソコンの電源が入っていないとパソコンの中の仮想空間から出れない。
ソファーがぽつんとある一面灰色の仮想空間の中ではお腹がすくこともないし、暑い寒いということもないが……やはり、俺は仮想空間が苦手だった。
自分達が人に作られた存在だと嫌でも思い知らされるような気がするからだ。




居間の扉に手をかけると、声が聞こえてきた。

これは―――――


「だからお願いっ!」


「いや…いいけど……俺でいいのか?リン。」



「あーりーがーとーっ!!!!!」


「うわゎゎゎゎゎっ!」


リンとカイトの声。

カイトはともかく、リンが早く起きてくるのは珍しい。
それより…


「何してんだよ。」


会話の内容に、思わず扉を開けてしまった。


「なっ…レン!!!?」


見えたのはぎゅうっとカイトに抱きついているリン。
ものすごく驚いた顔をしている。


「…何、してるんだよ。」


理由は分からないが、自分がいきなり不機嫌になったのが分かった。


「うゎゎゎ…あれ、レン?」
 
 
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