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ささやかなお礼文です。
怪談はいかが?
ささやかなお礼を捧げさせていただきます。
雨の多い時期が終わり、夏本番を迎えた最近はギラギラと照りつける太陽が眩しい。
夜になっても昼間の猛暑の影響で、蒸し暑く寝苦しい毎日が続いた。
そんなある日の夜、部屋の明かりを全部消して、あるのは蝋燭の小さな明かりが一つ。
しーんと静まりかえった部屋に響くのは、淡々と話す俺の声。
今日のように月も無く暑い夜。
仕事で帰りが遅くなった男は家路を急いでいた。
角を曲がってふと前を見ると、白い着物を着た女がこちらに向かって歩いて来る。
男は女にただならぬ気配を感じ、逃げようとしたが体が何かに縛られているかのように動かない。
女は少しずつ近づいて来る。
いよいよ目の前まで女が来ると、男に手を伸ばし、持っていた鈴をチリンと鳴らした。
女は男を避けてすれ違う。
その瞬間、男の耳元で囁く。
あと2回。
慌てて振り返ると女の姿はなく、体も動くようになっていた。
そして次の日も帰りの遅くなった男は前日と同じ道を辿り家路を急ぐ。
角を曲がった瞬間、体が動かなくなり目の前には昨日の女。
チリンチリンと鈴を鳴らしてすれ違う。
あと1回。
すれ違いざまに囁く。
昨日とは違う、まるで何かカウントしているかのようだ。
気になった男は、町の1番古い図書館で調べる事にした。
そして驚くべき事実を目の当たりにする。
その女の事は、地元では有名な話らしい。
その昔、一つの鈴を大切にしていた女がいた。
女には恋人がいたが、酷く嫉妬深い男だったようだ。
女があまりにも鈴を大切にしているものだから、その鈴に違う男の影を感じ、嫉妬心から女の命を奪ってしまった。
それからというもの、白い着物の女は男に復讐しようと鈴を鳴らしては、男を次々と呪っていった。
白い着物の女と出会ってしまったら、鈴の音を聞いてはいけない。
もし3回聞いてしまうと、呪い殺されてしまう。
対策は1度出会った場所には行かない事。
男はあの道を二度と通らない事を誓った。
調べるのに手間取って、図書館を出る頃はもうすっかり日が沈んでしまっていた。
そしてあの道を通らないように家路につく。
前とは違う道の角を曲がった瞬間、体が動かなくなった。
だけど前に女の姿はない。
しかし、気配は感じる。
そう…背後から。
男の調べは甘かったのだ。
実はこの女、2回すれ違うとその男を探して回るようになるのだ。
男は手遅れだった。
ひた…ひた…と裸足で歩く音が近付いて来る。
男のすぐ後ろに立つと耳元で鈴を…。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
恐怖に耐え兼ねたアカリが部屋中の電気を点けて回る。
「もういや!怖いよ!」
「…怖い話、とびっきりの。言ったの…アカリ…」
「でも怖いものは怖いの!」
あまりに寝苦しい夜が続くものだから、涼しくなるような怖い話をしてと頼まれたから話したのに…。
「それに…ただの作り話し…」
チリン…
「え…?」
「あ…」
「何!?今の音…鈴!?」
「いや、あれは…」
「どうしようゲイル!私、呪われちゃった!」
「落ち着いて、大丈夫…だから」
あぁ…失敗だった。
アカリがこんなに怖がるとは思わなかった。
さっきの鈴は俺の仕掛け。
話の最後に鳴るように仕込んで置いたもの。
さて…半泣き状態のアカリにどう説明したらいいかな。
FIN