牧物わくアニ

□秘めたる願い
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「………」

またか…。

朝、目が覚めればじんわりと嫌な汗をかいていた。


原因は分かってる…



嫌な夢をみているから…。




ふと隣を見れば、まだ気持ち良さそうに寝息をたてているアカリ。起こさないようにベッドから出て、アカリのお弁当作りに取り掛かる。


「はぁ〜…」
「ゲイル?」
「…あ、おはよう…アカリ」
「おはよう!どうしたの?ため息なんかついて」
「…なんでも、ない…」


言えない…。
言えるはずない…。
アカリに話したらきっとアカリを困らせる…。そんなのはイヤだ。

「本当?」
「本当…。はい、お弁当…」
「いつもありがとう」
「今日は何を手伝えばいい?」
「じゃあ、初めての土地の水まきをお願い」
「わかった…」


いつもの様にジョウロを持って外に出る。するとすでにアカリが動物たちの世話を終わらせて、土を願う土地で綺麗に咲いた花の収穫をしていた。

「…あ」

よく見るとアカリの背後に一輪だけ取り残された花が見えた。

アカリ、気付いてないのか…?


「アカ……っ!?」

アカリに取り残しがある事を教えようとした時、一輪だけ残った花に夢で見た自分の姿が重なって見えた。


周りの人間は歳をとって、一人、また一人といなくなっていく…。俺を残して…。

俺の周りは人間にしても風景にしても、時が経てば変わっていくのに俺は変わらない…。


そしていつの日かアカリも…。





「…………」
「うわぁ…凄いね!星がたくさん!」

夜、俺とアカリはいつもの様に星を眺めていた。

「凄い…吸い込まれそう…」

重苦しい空気を纏う俺とは反対に、持ち前の明るさ全快でアカリははしゃいでいる。


俺は、いつまでアカリと一緒にいられるんだろう…。
いつ、別れが来てしまうんだろう…。


「あ、流れ星!お願い事しなくちゃ!」
「……え?」
「流れ星だよ。お願い事叶うかもしれないでしょ?」

確かにそう言われるけど。俺の願い事なんて…。

「…どんなに強くねがっても…叶わない願いも、ある…」
「そんなのわからないよ?」
「分かる。絶対に叶わない」
「ゲイル…」
「…ごめん。ちょっと、頭を冷やして来る…」


俺はアカリの隣から離れて牧場近くの砂浜へ向かう。


「はぁ〜…」

アカリ、驚いてた…。
あんな風に強い口調で話した事なんてなかったから余計だと思う。


俺、バカだ…。


アカリは何も悪くないのに、ただどうしようもない現実から逃れたかっただけ…。
俺の我が儘なのに、アカリにあたってしまった…。

「アカリに、謝ろう…」

もしかしたら俺の態度に愛想を尽かしてしまったかもしれないけど、話しだけはしておかないと…。


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