牧物わくアニ

□芽生えた気持ち
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「………」
「………」

アカリは、今日はいつもより遅い時間に来たと思ったらずっと黙ったままで、イスに座って俯いている。

「……アカリ?」
「………」
「何か、あった…?」

せっかく来てくれたのだからこのまま無下ににするのも悪い気がして、何かあったのか聞いてみるもアカリは何も返事をしない。

「俺に…何か、できる?」
「魔法使いさん…」
「何…?」

やっと顔を上げたアカリの目は真っ赤で、目尻には涙が溢れていた。

「……っ!?」

そんなアカリがいきなり抱き着いて来てかなり驚く。と言うか…動揺する。

「あ、あの…アカリ…?」
「ごめんなさい…でも、お願い…もう少しだけ、こうさせて…」
「…アカリ」

俺にしがみつくように抱き着いたまま、アカリは震えて声を殺し、静かに泣き出した。
アカリに何があったのか、それは分からないけど…。
もしアカリが俺に何かを求めているのだとしたら、俺はそれを叶えてあげたい…そう思った。

だから、アカリの背中に腕をまわして抱きしめ返した。






「…ありがとうございました。急にごめんなさい…」
「気にしてない…もう、大丈夫?」
「はい。落ち着きました…」
「何があったか…聞いてもいい?」
「実は…」

落ち着きを取り戻したアカリは俺から離れる。
とりあえず座って、と向き合う形でイスに座りアカリの話に耳を傾ける。



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