牧物わくアニ

□感謝祭
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今日は冬の月の5日。
そう、感謝祭の日…。

感謝祭は日頃お世話になっている人に感謝の意味を込めてケーキを贈る日。
アカリも朝から大忙し…。


「えっと…いくつ作ればいいんだっけ…」
「15個…お店の人たちと、他に個人的にお世話になった人たちの分……」
「そうだった!ありがとうゲイル」

昨日忘れないようにってメモ書きしてたのにね…。

「でも…ごめんね?ゲイルに牧場の仕事全部押し付けちゃって…」
「大丈夫…今日は忙しいでしょ?」
「本当にありがとう!じゃあ行ってくるね」
「行ってらっしゃい…」

テキパキと手際よくケーキを焼き上げ、綺麗にラッピングするとくずれないようにリュックに入れて家を出て行く。

本当に忙しそうだ…。

俺もアカリにケーキ、焼いたんだけど…渡すの忘れた…。と言うか渡すヒマなかった…。

帰って来たら渡そう…。


テーブルの上に出しておいたケーキをまた冷蔵庫の中へとしまい、畑仕事から終わらせようと外へ出る。







「あうぅ〜…」
「……お疲れ」
「あぁ…ありがとう」

夕方になってクタクタの状態でアカリは帰って来た。
両手にはみんなから貰ったのであろうケーキを抱えて…。
帰ってくるなりテーブルへ突っ伏したアカリにハーブティーを淹れてあげる。

「はぁ〜まさかこんなに貰えるなんて思わなかったよ…」
「6個…約1ホール分…」
「ビックリしちゃった」

この大陸に住む人たちは、俺を含めて少なからず助けてもらっているのだからね。

「…アカリ、疲れてる時は甘いの…食べるといい」
「え?」

俺は冷蔵庫からオレンジケーキを取り出しアカリの前に出す。

「これ…」
「感謝祭…俺の、気持ち…。アカリ、ありがとう。これからも…よろしく…」
「…ゲイル」
「なんか…照れる、ね…」

『ありがとう』って簡単な5文字なのにいざ口にすると凄く照れる。

「ありがとうゲイル…。ふふ…やっぱりゲイルから貰うのが一番嬉しい!」

アカリは頬を赤く染めて笑う。

「そうだ!ゲイルにもケーキ、渡さないとね!」
「…え?」
「はい!私の牧場で採れた最高級の食材で作ったチーズケーキ!ゲイルにだけ特別」
「あ、ありがとう…嬉しいよ」
「今までお仕事とか手伝ってくれて本当にありがとう!…それに…私と出会ってくれてありがとう!!これからもよろしくお願いします!」


アカリは今までにみたどんな笑顔よりも輝くような笑顔で、ペコリと頭を下げた。



感謝祭は日頃お世話になってる人へ感謝を込めてケーキを贈る日。


俺はアカリからもらったチーズケーキを、アカリは俺の渡したオレンジケーキを…ケーキに込められた気持ちと一緒に一口食べた。


FIN

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